湿度の高い日

身体だけではない、乾いた物憂げな街路もまた、高湿度をまとっている。

 

進歩

現状の良い個所も悪い個所も、ともに把握することが必要だ。

前者だけだとその後の進歩はなく、後者だけだと求めてもいない方向への進歩が待つだけだ。

 

九相図

美しかったものが朽ち果ててゆくことを直視することによって、世の哀れとやらを知るとの説明がなされる。

だが、咲き誇った花が枯れてゆく姿を直視することによっても、世の哀れを知ることができるし、そこに残された種子によって、ふたたび花が咲き誇る姿まで直視することにもなる。

諸行無常とは、ゴールを持たない循環するものが、永遠へと至る概念だ。

対して九相図とは、ゴールが固定された異様な変態趣味の結実に過ぎない。

 

夜のギフト

鉄道の鋼鉄の軌道が発する規則的な音が、街の静けさの彼方、かなり遠い場所から響いてくる。

あまりにも饒舌な静寂。

 

不調

不調になってもそれに慣れてしまえば、それが標準の状態になり、不調になった原因は探されることもなく、そのまま温存され、さらに不調になってゆく。

 

冷えた水

硝子のカップに入った冷えた透明な水が、夏の光をまとっている。

だがそのまま放置すれば、いつしか冷えた透明な水ではなくなってしまう。

飲み干す以外に、やるべきことなどありはしない。
 

あの家に人が住んでいることは知っているのだが、二階の窓はいつも閉ざされている。

 

禅の公案

「歩く」という行為を言葉で表現するなら、肉体的な説明から目的論に至るまで、あらゆる検証が必要になる。

すべてを満たしたつもりでも、さらに欠落していることが見つかるだろう。そこで説明は無限に拡大してゆき、しかもそれでも完全なものにはならない。

禅の公案においては、その問いに対して、「そこで歩き出すこと」を解とした。

ロジックによって踏み込んではならない領域がある。

 

一巡

スタート時にあったことと同じことが起こると、一巡したという気持ちが起こる。

その後どうするかということになど斟酌することもなく、それはやって来る。
 

背負っている荷物

それが重いのか軽いのかは個々の考え方が決めることだが、なにをどう考えようとも荷物の重さは変わらない。

 

 

 

 

 

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