山高み夕日隠りぬ浅茅原後見むために標ゆはましを
草に寄せた歌
読み人知らず 萬葉集 巻第七 (1342)
長いこと、居続けた、── あの野に時の流れなど存在しなかった、── 風吹く明るい野で、いつも歌い、語らっていた。
取り囲む山々が高い、── 夕暮れ時を過ぎてしまった、── もう光が届かない。
いつかまた、かならず来れるようにと、道標を結んでおくのだった。
── 再会の約束をしていなかった。
もうなにも見えない、── 寄せる闇の中、もうどこにも標を結ぶことができない。