今回のヤング向け音楽は「ナウな音楽をナウなウィーンで」だ。
ご紹介するのは映画音楽”第三の男”を大ヒットさせたアントン・カラスによるチター(ツィター)演奏集だ。
アントン・カラスはウィーン生まれのウィーン育ちだ。幼少のころから音楽の才を見せ、十五歳の時には居酒屋で演奏して生計を立てていた。
彼は特別な英才教育を受けたわけではなく、「才能豊かな庶民」だった。
多くの曲で、イントロに「チャラララ~ン」という前振り?が入る。「これから始まるよー」と言っているようで楽しい。
イージー・リスニング音楽で、ウィーン人によるものはちょっと異質だと思う。
”第三の男”はバチカン宮殿やバッキンガム宮殿からも招待を受けて演奏された。日本では”そこそこのヒット”だったろうと思うが、欧州の薫り高い音楽なのだ。
なお、チターという楽器だが、お琴のミニチュアのような楽器で、弦をはじいて音を出す。
遠縁にはリュートやギターなどまで含まれるだろうが、ウィーンではこのように発達したということだろう。
硬い爪で弦をはじくので、音の出し方はチェンバロに近い。チターはチェンバロの影響を受けたとする説もある。
伴奏にアコーディオンっぽい音が聞こえるが、形は似ていてもドイツ圏で独自に発達した「バンドネオン」だ。
イギリス圏なら「コンサーティナ」だが、同じように聞こえても、それぞれは「あんなのとは全然違う」とのことのようだ。
チター音楽はバンドネオンなどとともに、主に居酒屋や街角などで演奏されていたであろうことを思うと、聴けば居ながらにしてウィーン旅行を楽しめることになる。
雰囲気をより味わいたい”こだわり派”には、黒ビールがおすすめになるのは言うまでもない。
LPレコードでアントン・カラス ”白い恋人たち” ”鉄道員” 他 全6曲
エーデルワイス - Edelweiss (0:00)
ただ一度の機会 - Das Gibt's nur Einmal (2:19)
河は呼んでいる - L'eau Vive (5:00)
白い恋人たち - 13 Jours en France (7:34)
鉄道員 - La Dedico A Te (10:33)
死ぬほど愛して - Sinno' Me Moro (13:23)
LPレコードでアントン・カラス ”第三の男” ”太陽がいっぱい” 他 全6曲
第三の男 - The Third Man (0:00)
マルセリーノの歌 - La Cancion de Marcelino (3:33)
ブーベの恋人 - La Ragazza di Bube (6:23)
ベニスの夏の日 - Summertime in Venice (8:56)
太陽がいっぱい - Plein Soleil (11:36)
ウィーンの森の物語 - Tales from The Vienna Woods (14:21)