いにしへにありけむ人もわが如か三輪の檜原に插頭折りけむ

 

                雑の歌 葉

                柿本人麻呂 萬葉集 巻第七 (1118)


 

檜の森の中の道。

檜は、── 明日はなろう、明日は檜になろうと、いつも信じてきたのだろう。

 

小枝を折り取って髪に差せば、古風な衣をまとった見知らぬ人が、ふいに姿を表わし、ほほ笑みかける。

 

ここは聖域なのだ、── 檜の木立から、陽が漏れ落ちている。

── 古代の人々もまたこの道を歩み、檜の小枝を髪に差すために、立ち止まったのだろうか。