かきくらし猶ふる里の雪のうちに跡こそ見えね春は来にけり

 

                  五十種歌たてまつりし時

                  宮内卿 新古今和歌集 巻第一 春歌上 (4)

 

 

雪が降り続けている。── いまは、光は遠ざかり、よく知った里は白く染め上げられてゆく。

── 旅人たちの足跡もまた、── すべてが白に覆われてゆく。

 

佐保姫が、冷えた白の見えぬ先から、 宇津田姫にほほえみかけている。

佐保姫の気配は、いまだ覆われているはずなのだが、── 宇津田姫の告別の歌は、もう聞こえているのだな。