雪
黒い木立の手前、風の中の白い舞。
木立の、見えない向こう側にも降っているのだろう。
雪が吹き込まない藪の中で、雀たちがにぎやかに鳴き交わしている。
移動
路面しか見えていない移動もある。
碑
まったく知らない同士の人々が、刻まれた同じ文字列を見つめている。
過去においても、おそらく未来においても。そこでなされる会話も、ほぼ同じものになるだろう。
碑とは、それならそのために刻まれたものなのだろうか。
猫
冷えたストーブの前に座っている。いつか暖かくなることを知っているのだ。
人が点火することまでは知らないような気がするのだが。
冷えた日
川辺に陽光だけがまぶしい。
高揚感
少なくとも、疲労感と合わせて考える必要があるだろう。疲労感はいつでも人を押し潰そうとしている。
そんな疲労感を焼き尽くす熱こそが、高揚感なのだ。
定型
カオスの中にあるからこそ、求められるもの。
「真面目さ」の意味も、そこから解されるだろう。
謎
探すからこそ、謎は増えてゆく。探すのをやめれば、謎も消滅する。
だが、謎がある場所には、ある種の恐怖感も潜在するだろう。それを求めるかどうかなのだ。
旅行
未知の中にある既知との邂逅。
水面
霧が深い。
こんなとき、水辺の道を歩いていると、いつも同じ城塞に行き当たる。
── そこしか知らないのかもしれない。
── 見知らぬ影がついてくる。
かすかな風、── 見たこともない鳥たちの歌が、いつしか水面の影を崩してゆく。