夜雨 王節卿
簾幕蕭々竹院深
客懐孤寂伴燈吟
無端一夜空堦雨
滴砕思郷万里心
雨が降っている、── 夜風は帷帳に吹き、奥深くにある竹院の周辺に、人の姿は見えない。
ここが自分の居場所なのだ、── 部屋の燈火の影はかすかに揺れ、旅人はただ独り歌う。
夜雨は果てもなく降り、── 歩む人のいない階段を、夜闇の中に打ち続けている。
かなた、故郷には幼いころの歓声と夢とがいまも残り、── だがこの胸の故郷への思いは、いまは異郷の夜雨に打たれ、ゆっくりと破砕してゆく。
夜雨 王節卿