秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる

 

              秋立つ日よめる

              藤原敏行朝臣 古今和歌集 巻第四 秋歌上 (169)

 

 

熱の残像は、いまだ彼方にまで広がっている、── 都市からの道が至る、分岐の果てにあるあの稜線も、いまはかすかに揺らいでいる。

 

ふいに吹く風が、この身の影と素肌に触れる。── 秋なのだ、風が龍田姫の告げる言葉を届けに来ている。