UPSILON TELE 1:5.6 f=300mm

 

 

 

 

謎のブランド、ウプシロンの300mm望遠レンズだ。Tマウント式であり、プリセット絞りだからかなり古いレンズだろう。発売は1960年代の終わりごろだろうか。

シグマのOEMだという話をどこかで聞いた記憶があるが、詳細は不明だ。

 

おそらくだが「低価格で望遠レンズを」という販売コンセプトによって作られたものだろう。

見た目は望遠レンズというよりも望遠鏡だ。まあ、全長を短くするために補正レンズを追加するより、「そのまま」の方が光学系に無理は来ないだろうと思う。

 

光学系は3群4枚のテレフォトタイプ。最短撮影距離は数値が記載されていないが4m以下のようだから「まあまあ」と言った所だろうか。3m程度は欲しいが。

 

後群レンズは貼り合わせではなく2枚に分かれている。コーティングはされておらず、しかしコバ塗りはしっかりしている。

コバ塗りがしっかりしているのに、鏡筒内部の反射はかなり大きいなど、何か仕様上のアンバランスが感じられる。

 

三脚座が付いており、絞り羽根枚数は13枚と多い。驚くのはピントリングのローレット加工だ。次の写真がそうだ。
 

 

通常このようなデザインなら、ローレットは「ゴム巻き」あるいは「プラスチックの成形品」と考えてしまうだろう。

 

ところがこのレンズの場合、金属の円筒をローレット状に加工しているのだ。塗装が剥げた個所に地金が見え、そもそもネジが切ってある。

加工するのにどれほど手間やコストがかかっただろう、驚くよりほかはない。

 

つまりなぜか「豪華」と「チープ」が同居しているようなレンズなのだが、それだけに、写りがどのようなものであるのか、調査?せざるを得なくなるではないか。

 

ということで北茨城市の大津港、五浦、福島県側にある勿来漁港に行った。

立夏は目前だ。晩春に岡倉天心の活動の拠点と近隣の漁港を、謎のレンズとめぐるのもなかなか楽しいことと言えるだろう。