鳥の影

なにかが地を横切った。

空から地表を見ながら旋回する猛禽類の影だった。

 

城壁

壁の中に座り込んでしまえば、いつか壁の外を忘れてしまうのだろう。

自分の影が消え失せてゆく思いとともに。

 

ゲオルク・トラークル

夕暮れ時の蒼ざめた街路。

どの詩文にも共通しているのは、かなたに白い噴水が音もなく、幻影のように見えていることだ。

 

こちら側の窓の外には陽ざしが見えているのだが、向こう側の窓の外には重たい曇り空が見えている。

 

モラル

モラルは個人主義と必ず対立する。無私を要求するからだ。

モラルとアンチモラルの間を往き来することの心地良さ。そこにある、個の明滅。

 

幽霊

深い影を広げる大樹に寄りかかり、立ったまま頭を垂れ、目を閉じている男を、幽霊が静かに見つめている。

 

ゴールデンカムイ

連ねられてゆく命そのものへの、惑わされることのない肯定。

 

水平

完全に水平に描かれた線には静けさがある。

傾きがあると、さまざまな音がそこに生まれる。

 

収納

ある枠内に収納する場合、そのスペースが限られている以上、より多くを収納するためには収納するものの配置が重要になる。

これはたとえば絵画などにも言えるのだろう。配置による高密度化が必要だ。

 

生き物

自分が渇望しているものを象徴化している生き物が、渇望を湧水のように止まることなく呼び戻す。