夜の雪

街灯の中での、白の舞踏。

楽しげな笑顔もそこにあるのだろう、零度の大気の中に。

 

道路横の茂みに、靴がひとつ落ちていた。

まさか歩いていて脱げてしまい、それに気がつかなかったなど考えられない。なぜそんなものが落ちているのか不思議だ。

確実なことは、落とさなかった方の靴も不用品になってしまうということだ。

 

無響室

そこに入ると音の無さのために、どこかにストンと落ちたような気分になる。

しかし浮遊感を覚えるという人もいるようだ。その違いはなんなのだろうか。

 

無音

しっかりした耳栓を付ければ、やはりストンと落ちるような気分になるかと言えばそうでもない。

呼吸音とか血行音、心音など、自前の音によってそれなりに賑やかだからだ。

 

凍った路面

少なくともそこで転ぶ危険性がない限りは、美しいと見えるだろう。

しかし、転ぶ危険性を秘めるからこそ、美しいと見ることもできる。

真逆のものを孕んでいるものこそ、本当に美しいと言えるのかもしれない。

 

引き換えるもの

なににおいてもそれはある。

たとえば酒を飲んでいる時間帯と、翌朝の頭痛と。

 

通り過ぎた分岐

交差点のそれぞれが、どこかの地への分岐になっている。

通り過ぎてから思うものだ。あちらに行きたかったのだ。ウィンカーを上げればよかっただけなのだ。

 

飽きが来ない

さまざまなアートにおいて、理解できない未知がそこに潜むのを感じる限り、何度もそれに触れたくなるものだ。

 

たとえ話

夜中に山道で迷って途方に暮れているとき、ふと一軒家を見つけたなら、道を確認するためにもおそらくノックするだろう。

そこで招かれて中に入るかどうか、幻想物語とはそこから始まるものなのだろう。

 

冬の野

枯れた野草が風になびいている。鳥たちの呼び合う声がひびいている。

ふいに翳ったのは、雲の影が通り過ぎていったからだ。