秋ふかき淡路の島のありあけにかたぶく月をおくる浦風
 
          和歌処にて六首歌つかうまつりし時 秋歌
            新古今和歌集 巻第五 秋歌下 (520) 前大僧正慈円
 
 
冬が近い。
彩り豊かな龍田姫が、宇津田姫になにかを囁いている、── 白姫と黒姫の名を合わせ持つ宇津田姫に。
 
── ふたたび季節は、モノクロームの中へと沈んでゆく。
夜には、その言の葉を振り注がせていた月読は、内海の風に送られ、地平のかなたへと遠ざかってゆく。
 
夜闇の中に沈思していた豊かな島が、いま、海原の薄明の中、目を覚まそうとしている。
冬が近い日、── ふたたび朝が訪れる。