露すがる庭のたまざさうち靡きひとむら過ぎぬ夕立の雲
千五百番歌合に
権中納言公経 新古今和歌集 巻第三 夏歌 (265)
灼熱する夏の日々、── 高まり過ぎた熱は、人の思いをも夏空高くに、連れ去ってゆく。
だが、日が傾いてゆくこの時間帯、騎馬に打ちまたがる雨神が、夏空を通り過ぎていった。
高きにあった人の思いは白く輝き、── 人の生きる舞踏の場に戻って来た。
いま、たま笹の葉に宿った雨滴が、夕陽を受けている。
── 風が吹いている。
笹の葉に涼風は吹き寄せ、葉は涼風になびき、── 宿っていた露の光は、静かに地に還ってゆく。
J.S.BACH "Fantasie und Fuge A-Moll BWV 904"
- Kurt Redel - Munich Pro Arte Chamber Orchestra