森の水辺に、新緑と朱の色彩は斉唱する - 高萩市 花貫渓谷、安良川八幡宮
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新緑を探しに行こうとすると、けっこう頭を抱える。なにしろ田舎だからどこも新緑だ。選択肢が膨大なのだ。
ということで、高萩市の花貫渓谷に行くことにした。渓谷の下流域、不思議な仔馬の伝説が残る名馬里ヶ淵の周辺だ。
人間たちから排除された神族の仔馬は、今日もただ一頭、水辺で遊んでいるのだろうか。
「やあ、お久しぶり」
「知らない人に声をかけられたらね、シカトしろって父さんが言ってた」
「父さんって、も、もしかしてあのお方?」
「そうだよ、阿呆でもよくわかってるんだね」
「静かにしてほしいんですけど」
水辺に緑は急速に拡大してゆく。
みどり、緑、翠、碧。漢字とはなんと雅なのだろう。そんな拡大を山つつじが朱に彩ってゆくのだ。
近隣の安良川八幡宮にも立ち寄った。水戸藩は領内の八幡社のほとんどを潰した。百五社あった八幡社のうち、残されたのはわずか四社だった。
理由ははっきりしないのだが、これでは根絶やしに近い。安良川八幡宮は、残された四社の内の一社なのだ。