海原は晴天の下、一層さえざえとした青をまとっている。白い鳥たちが波間を、遊び戯れながら飛び交っている。

 

なぜ、遊び戯れていると分かるのか。

獲物を狙ってはいないからだ。飛翔しながら、崩れる波に急接近し、波にのまれる寸前でそこから離脱する、それを繰り返しているからだ。

 

揺らぐことなく静止しているかのような、空と海の青。

そこに、止まることのない雲、波濤、鳥たちの白が、その変化し続ける輪郭を、陽光によって際立たせている。

 

それが宇津田姫のまとう色彩なのだ。── それなら冬の女神は、とくにお洒落なのかもしれない、これまで、そう考えたことはなかったのだが。

 

 

あの日々に、かなたに見た雪山もまた、同じ色に染まっていた。── 青だけでなく、白もまた静止していた。

 

あの日々も風が強かった。静止する地表の、零度の白の上を、雲の影が走って行った。

白い狼の群れが雲の影を追っていた。獲物を追っていたわけではなく、地表の無数の隆起を飛び越えながら、遊び戯れていた。

 

陽光をまとう冷えた風は、その光によって冷たさを隠そうとしているかのようだ。

だからこの身は、気がつかないうちに冷えていった。しかしそれが、なにかの理由になることなど、ありえない。

 

 

浜辺は冬風の中にひろがり、決して老いることのない神秘の海の神は、今日は宇津田姫となにかを語らっている。

輝く美しい髪がご自慢のメドゥーサとその姉妹たちは、止むことのない潮騒の中で、楽しげに笑っている。

 

だからこの身は、気がつかないうちに冷えてゆく。しかしそれが、なにかの理由になることなど、ありえないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

"The Windmills of Your Mind" - Percy Faith and His Orchestra

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