初秋に緑と黒の混沌の中を - 常陸太田市 西山荘周辺、福島県 矢祭町
すでにピークを過ぎた緑を撮影しようかと思った。
もちろん緑は、見た目には今なお燃え盛るかのように茂っている。画像ソフトで緑を朱に色変換すれば爆発的な炎になるだろう。
しかし近寄ってみれば、もうここからこれ以上は拡大しないのだろうと感じてしまうのだ。拡大のピークにある姿が、すでに見えているからだ。
それなら、そんなピーク付近にあるものを、できるかぎりまとめて撮影しておきたいのだ。
そこで、福島県矢祭町の「夢想の滝」周辺と、常陸太田市の西山荘を、広角系ズームレンズを付けてめぐることにした。
夢想の滝周辺は弘法大師の時代、つまり平安時代の初期から知られていたようなのだが、ひろく開発されているわけでもない。野放図に茂る木々が、谷間のあちこちに点在する大岩を覆っている。
それらの木々に大木は見当たらない。岩が硬いので根が内部まで張りにくいため、大木になる前に倒壊してしまうのだ。
昼なお薄暗く涼しいこのエリアは、江戸時代の仏像が発掘されるなど、古くから聖域とされてきた。それにもかかわらず、あまり開発されていないという点が、ちょっと独特だ。
水戸光圀ゆかりの西山荘は、それに対して管理されたエリアと言える。
だが管理され整備されていても、緑は夏の間に拡大を続けてきた。そうしていま、ピークの姿を残して折り返そうとしている。
管理の中にある野放図の混沌が楽しいのだ。
一日中、謎の天気だった。基本、曇りなのだが、晴れから小雨までいろんなのが交互にやってきた。
天気予報なら「曇り時々晴れ、所により雨が降るでしょう」などというような、勘弁してもらいたい内容になる。こうなると、なんだかすべてが「当たり」だ。
曇りや晴れ、小雨のいずれかにおいて、たまたま自分がどの場所に居るのか、それによっても緑と黒の混沌は異なる姿を見せる。
「想定外」しか見つからないという、実にナイスな一日になるのだ。