獨ふす草の枕の露の上に知らぬ野原の月を見るかな
旅宿月
金槐和歌集 巻之下 雑部 (579) 鎌倉右大臣実朝
果てのない旅路にあって、いまは静まる夜にふと目が覚めれば、── 名も知らず、歩んだこともない野が、かなたにまでひろがっている。
果てのない旅路にあって、いまは静まる夜にふと目が覚めれば、── 名も知らず、歩んだこともない野が、かなたにまでひろがっている。
野は淡い光を、── 月明かりを受けながら、夜闇の中に浮かび上がっている。
── いつしか露が降りている。
はかなげな露は、天空の月読の光をまとい、傷ついた旅人の思いに微笑みかけている。
