雨降る日の森、木下闇の中の長い道 - 日立市、小木津山自然公園
雨の日は悩む。ヘルシーに外を歩くか、家で酒でも飲むか、朝からいきなり岐路に立たされてしまうのだ。
くだらぬ岐路もあったものだが、それにしても一日は短い。家になどいたら、瞬きをするうちに夕方になってしまう。で、そんなわけでヘルシーを選ぶことにした。
近隣に比較的規模の大きな自然公園がある。いまから50年ほど前、手付かずの森林の中に遊歩道などが整備された小木津山自然公園だ。
市が管理し、人が歩くから公園としての体裁が成り立っているのだが、緑は常に圧倒的な勢いで押し寄せている。
この公園は、もし10年も人が立ち入らずに放置されれば、廃墟になるのではなく、ふたたび森林に飲み込まれてしまうだろう。
市民の憩いの場として造成されたのだが、人の言葉からは離れた野生とか命といったものの気配があまりにも濃密な公園なのだ。
「憩いの場」というものに関して、現代社会において「癒し」という言葉がよく使われる。
しかし癒しとは、ただ優しく美しく刺激がないだけのものではなく、野生や命と背中合わせにあるはずのものなのだと思う。人は本来、そんな中に生まれているからだ。
この公園には不思議な感覚を抱いている。
別に自分が「見える人」ではないのだが、付近に古く大きな神社がないにもかかわらず、よく似た雰囲気があるのが感じられるのだ。
古く大きな神社がなくてそれを感じさせるエリアは、知る限りにおいて他には、水戸市の七つ洞公園や北茨城市の岡倉天心ゆかりの五浦海岸など、数少ないのだが。
この季節、木下闇は公園内の全域に広がっている。雨降る中、長い道を歩こうと思うのだ。
Josquin des Pres - "Missa Pange Lingua" - Martin Behrmann
: ジョスカン・デ・プレ - ”ミサ・パンジェ・リングァ” -[ Vinyl ]