将軍家に守られた、階段と坂道に囲まれた街 - 常陸太田市 旧市街
曇天の一日だった。希に晴れ、希に小雨がぱらつくという特徴のない一日だ。もう少しビシッと決めてほしいものだ。
で、今回、常陸太田市の旧市街を超広角レンズで撮影したくなった。旧市街は水戸徳川家ともゆかりが深い、歴史のあるエリアだ。
過去に旧市街は、望遠レンズで撮影することが多かった。しかしどんな焦点距離のレンズを使っても、その焦点距離ならではの絵は、かならず待っているものだ。
先月、24mm広角レンズを付けて雨の中の旧市街を歩いたのだが、さらに欲が出て?、今回は17mm超広角レンズを持ち出し、ふたたび同じルートを撮り直すことにした。
フルフレームにおける焦点距離17mmは、その画角の大きさから、描写がやたら極端なものになる。
画面の左右に写っているものは、撮影者自身のほとんど左右方向にあるものだ。それは、ファインダーを覗いて初めて、「あ、自分の右側(左側)に、こんなものがあったのか」と気がつくほどのものなのだ。
カメラを上に向けたり下に向けたりすれば、「縦の平行線」はたちまち三角形や逆三角形になってしまう。17mmクラスになると、特に極端になる。
カメラを正面に向ければ、もちろん平行線は平行なままなのだが、パースペクティブが正面方向に距離的に機能してくるから、近くにあるものでもかなり遠くにあるように写る。
それなら超広角レンズにおける構図とは、極端に傾斜した直線や三角形を複合したものなのだと考えると、わかりやすくなるだろうと思ったりもする。
ときどき超広角レンズにハマる。当然、その描写は異界度がやたらと高いので、ハマったおかげで頭が痛くなり、また普通の?世界に戻ってきたりするのだが。
高台にある常陸太田の旧市街には坂が多い。路地に入ってゆけば、謎の階段が突如として現れたりする。歩くほどに、傾斜した直線による目眩めく空間が出現する。
もちろん、上り下りが多いので、歩けば体温も心拍数もぐんぐん上がってゆく。
「じつにヘルシー」というおまけまでつくのだ。
ぶらぶら歩いていると、突如として猫が飛び出してきて、少し離れた場所からこちらを見ていたりする。
こう言っているかのようだ。「おれ(or あたし)のこと、追いかけているにゃ?」。
それならこう答える。「そう言うなら、追いかけてやるにゃ?」。
斜面に沿った空間にも新しい家があり、古く、すでに放棄されてしまった家もある。
夏の緑に埋もれかけているようなそれらの中を、高まる体温と心拍とともに巡りたくなるのだ。