SUPER-KOMURA 1:4.5 f=90-250mm
KOMURA ZOOM TL925 - KOMURA-LENS MFG.LTD
「コムラーレンズ(旧社名 三協光機)」の望遠ズームレンズだ。
三協光機は1969年に社名を「コムラーレンズ」に変更しているから、このレンズは1969年以降に発売されたことになるが、社名変更後、最初期のものだろう。
いまでもときどき見かけるから、当時、けっこう売れたレンズなのだと思う。
このレンズはユニマウントと呼ばれるコムラー独自のマウント交換方式を採用している。ユニマウント単体はタムロンのアダプトールなどと比べればかなりゴツいが、設計思想によるものだろう。
カメラとレンズを接続する個所だから、華奢になることを避けて、あえてゴツくしたのかと思う。
外観的には、総金属製のボディはずっしりと重い。デザインはテーパー加工を多用したかなり凝ったものになっているのだが、それが時代を感じさせる。
同時代に販売されていた他社レンズと比較しても、こういうデザインは珍しく、かなり異質な存在だったと思う。
最短撮影距離はピントリング回転端になぜか数値記載がないので、はっきりはわからないのだが、おおよそ1.8m程度といったところだろうか。
焦点距離が90mm側で使う場合にはつらいものがあるが、250mm側で使う場合にはそれなりに寄れるレンズと言える。
描写面では、シャープネスはなかなかのレベルだが、光量不足時でのシャープネスは、あまり期待できない。しかし光量不足時の描写の甘さには、雰囲気面でのメリットがあると思う。
発色はまずまずで、実際に見た印象に近い。トーンの変化はなだらかで癖がない。
独得なのは描写の質感だ。記事用にリサイズした写真ではわかりにくいのだが、どこか濡れたような描写をするのだ。
いや、川とか滝の写真は、被写体がそもそも濡れているから濡れたような描写をして当然なのだが、水を写していない被写体においてもそう感じるのだ。
このレンズに対するネット評価は、多くの場合「いまいち」だ。発売当初にはカメラ雑誌からも酷評されたそうだ。今回使った個体も、そこそこ程度が良かったにもかかわらず、¥980で売られていた。
しかし使ってみて驚いた。個人的にはなかなかのレベルにあるレンズだと思う。
「酷評した爺い、出てこい」などと、ひどいことを言う人が出てこないか、心配になるではないか。
で、久しぶりに福島県の矢祭(やまつり)に行った。もちろん、撮影だけでなく、アユの塩焼きも目的に入っている。
矢祭町はお気に入りなので、ときどき足を延ばす。なにしろ「矢祭」という、源義家由来とされる地名が良い。
これに勝る地名はそれほど多くはないだろう。「東京だって?おととい来やがれ」と、誰だって思ってしまうだろう。
いや、思わないかもしれないが、西行法師が「心ある人に見せばやみちのくの矢祭山の秋のけしきを」と詠んでいるように、古くから知られている地名なのだ。
矢祭町を流れる久慈川は、川床に岩盤がひろく露出しているため、あちこちに白波が立っている。
それが、白龍の子どもたちが賑やかに遊んでいる姿のようで、見ていて楽しい。
川床となっている岩盤は、矢祭からは近隣にある「袋田の滝」周辺もそうだが、水流による浸食など、ものともしない気合の入った硬さを誇っている。
そんじょそこらの軟派な川床ごときと一緒にしてもらっては困るのだ。
いや、罵倒するようなことではないのだが、やはりアユの塩焼きはそういう場所で食べたいではないか。
帰路、同じ矢祭町の滝川渓谷にも立ち寄って撮影し、さらに日立市内に入った頃には鬼のような土砂降りになり、ラッキーとばかりにまたもや撮影したから、撮影枚数がやたら増えてしまった。
それが頭が痛いのだが、一緒にお散歩していただければ楽しいのだ。
この記事の末尾に置いたYouTube音楽は、このレンズと同時代のものだ。BGMとして聴きながらのお散歩は、楽しみを倍増してくれるだろう。
多くの評価が「いまいち」のこのレンズは、どこまで意地を見せてくれるだろうか。