秋風の袖に吹きまく峯の雲をつばさにかけて雁も鳴くなり
詩に合わせし歌の中に山路秋行といへることを
藤原家隆朝臣 新古今和歌集 巻第五 秋歌下 (506)
秋風はこの身に吹き、まとう衣の袖は風を受けている。
明るい秋空の下、かなたの峯は青く高く、白雲をまとっている、── 秋風を受ける、神々の白い衣であるかのように。
天高く、雁の群れが風の中を飛翔してゆく。
神々の白い衣を翼にかけ、その白が進軍の旗飾であるかのように、── だからそこに歌がひびいている。
歌がひびくから、思いは仲間たちに伝わる、── 歌がひびいているから、神々は命あるものたちに、ほほえみかけている。
装いせよ、わが魂よ、秋風はこの身に吹き、まとう衣の袖は風を受けている。