夕されば野路の刈萱うちなびき乱てのみぞ露もおきける
 
            野刈萱
             金槐和歌集 巻之上 秋部 (214) 鎌倉右大臣実朝


秋の野に野草は終焉を迎え、かなたの稜線に日は沈んでゆこうとしている。
だが闇はまだ遠い。秋の風は残照の中を走ってゆく。── 野には、風に倒れた刈萱の群生がひろがっている。
 
季節の境界にあって、倒れた刈萱に露は降りている。
── 倒れていなければ、露をまとうこともないだろう。── 倒れてしまったから、露の光は刈萱に宿っているのだ。
 
かなたの稜線に、秋の日は沈んでゆく。
── 残照の中、終焉するものに降りおりる露の光。── それが、約束されていることであるかのように。
 
 
 
 
 
 
 

 

4 Impromptus, Op. 90, D. 899: No. 3 in G-Flat Major (Live, Besançon, 16.IX.1950)