陽光の差さない秋の日、乾いた道は緩やかに曲がり、この場所からかなたまでは見わたせない。

道の横のやや広いところに、子どもたちのための、小さなぶらんこや滑り台が置かれている。

原色系の色彩で染め上げられたそれらには、無邪気な歓喜の残像があふれている。

── 慈しむ者と、慈しまれる者とがいる。

 

野草は風の中にうつむいている。鎮められてゆくのだ、熱に満たされた季節とともに。

── だがそれはふたたび還ってくるものなのだ、古代の日々から何も変わることなく。

 

 

路上、木々とコンクリートのビル群の姿が、移動しながらゆっくりと交錯してゆく。

木々はビル群の窓に映り、── ビル群の窓は、映る木々を閉じ込めようとしているかのようにも見えるのだが、── 映っているものなら、とらえることなどできるはずもないだろう。

 

少しばかり記憶違いをしていた。── 子どものころ、浜辺に降りて行った、崖を切り通した急な坂道は、とうに閉鎖されてしまったと思っていた。

 

だが、閉鎖などされてはいなかった。そこは、記憶していたはずの場所から少し離れた場所にあったのだ。

付近はすっかり変わってしまっていたのだが、波濤のかなたに見える灯台の位置だけは、変わってはいなかった。── だから、記憶違いに気がついたのだ。

 

 

木々の影はビル群の窓一杯に映り、ビルとビルの間の路地の奥は暗くて、何があるのかわからない。

だが、遠くに見える灯台の位置だけは変わってはいない。

── いったい、いま、どんな迷宮にいるのだ。── なぜ迷い込んでしまったのだ。

 

道の横のやや広いところには、子どもたちのための、小さなぶらんこや滑り台が置かれている。

原色系の色彩で染め上げられたそれらには、無邪気な歓喜の残像があふれている。

 

── 慈しむ者と、慈しまれる者とがいる。

それならわかりそうなものだ、なぜ迷い込んだのかを。── 対にあるどちらにも気がつかなければ、どこにもいないことになってしまうのだろう。

 

それに気がつくこともなかったから、ありとあらゆる運命が、ここにまで導いてきたのだ。

── 迷い込んだのと何も変わりはしない、この場所にまで。

 

 

秋の日々、広がる硝子の壁面、── それはペルセウスの鏡の盾として、木々の姿とゆっくり交錯してゆく。

壁面に映る木々の枝に、あの子どもが座っている。

 

どうせわかっていたのだろう、── それならこのまま目を閉じて、きみが話してくれることに耳を傾けるのも、悪くはないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

Mozart: Piano Concerto No.27 in B flat, K.595 - 1. Allegro