トキナーの単焦点望遠レンズだ。発売された時期ははっきりわからない。
マウントはKマウントだがAポジションはついていない。デザインから見て1980年前後のものだろう。
RMCシリーズは、比較的低価格な初中級向けレンズシリーズだった。
このレンズの最短撮影距離は2.5mで、別途マクロ機能が付いているわけでもなく、あまり寄れない。
焦点距離200mmで開放F値3.5というスペックは、ズームレンズでも同等のものが次々に登場していた。
そのため、このスペックの200mm単焦点レンズは、どのメーカーのものも急速に人気が無くなっていった。このレンズあたりが最後の世代になるだろうか。
金属鏡筒のずっしりしたレンズだ。特徴はと言うと、柔らかめの描写、なだらかなトーン、強調感のないコントラスト、誇張のない発色あたりが挙げられるだろうか。
要するに目を引くような特徴を持たないレンズと言えるのだが、それだけにオールドレンズの描写を楽しませてくれると思うのだ。
近接撮影での花や葉を見ると、数値的特性が良くても、どこか造花のような描写になってしまうレンズも見受けられる。
このレンズは造花のように写らない。これはトーンの描写にすぐれているからだと思う。
望遠200mmの画角は被写体の切り取りにおいて、かろうじて自然な描写が残る画角と言えるだろう。
「自然に目に入るもの」と、「気を付けなければ見過ごしてしまいそうな、異界的なもの」の境界付近にある画角だと思うのだ。
相変わらずの雨混じりの曇天下、このレンズとは久しぶりに茨城県植物園に行こう。
この季節、熱帯植物園の温室の窓は開放されており、湿度の高い夏風が吹き抜ける。要するに中も外も同じだ。
ここに迷い込んだ虫は、南国の異世界に当惑したりするのだろうか。
ブーゲンビリアや、どこか神秘的な蘭の花は、湿度の高い日本の夏風を楽しんでいるのだろうか。