午後、久しぶりに昔のJ-フォークを聴きたくなった。
ヒットを集めたベスト盤LPを取り出した。吉田拓郎や五輪真弓、ふきのとう、山本コウタローなどのヒット曲が入っている。

 

このLPの中で、なぜか偏愛している曲が、猫の「各駅停車」だ。「♪ あのひとと、もう二度と、旅をすることもない」。

ついつい一緒に歌ってしまうではないか。(^^ゞ


で、それに気を良くして、続けてほかのベスト盤LPも聴き始めた。
J-フォークの連チャン再生はめったにしたことがないのだが、なんだかどんどん聴きたくなったのだ。

 

こちらのLPには、はしだのりひこ&クライマックスの「花嫁」が入っている。
あらためて聴いてみて、このグループの女性ボーカルがメチャクチャ上手いのに気がついた。
ただ上手い歌手ならいくらでもいるだろう。しかし彼女の、全身で発声しているかのような朗々とした歌唱は、他の歌手となにがどう違えば出てくるものなのだろうと思わせる。


さらに、吉田拓郎の「ぷらいべえと」を聴いた。
これは少々珍しいLPで、彼がほかの歌手のために作った歌や、彼自身が個人的に好きな歌が集められている。
「夜霧よ今夜もありがとう」や「くちなしの花」など、昭和のカラオケ親父の定番とも言える曲だ。

いまでは少なくなったが、このレコードが出た当時はカラオケスナックが全盛だった。

マイクを握ったら放さないとか、楽しい親父がたくさんいた。
吉田拓郎の「落陽」を歌ったとき、知らない親父が仲間たちに、「あの曲、落陽という曲なんだ!おれが最高に好きだった曲だ!」と、大声で説明しているのが聞こえてきた。

 

トドメにその親父は握手を求めて、満面の笑顔でこちらにやって来た。

もちろん、まったく知らない親父なのだが、笑顔とともにある共有感が、なんとも楽しいではないか。


次は、五輪真弓の比較的初期のライブ、「THE SHOW」だ。
このライブ盤では「アカシアの雨が止むとき」が圧巻だ。どこが圧巻かというと、ともかく思いが表出するような歌唱が圧倒的だ。

 

ヒットした曲の場合、作詞家は自分が作った歌詞をさまざまな歌唱で聴くだろう。

水木かおるは、自分の作った歌詞をこのような歌唱で聴いてどう感じるのだろうかと思う。

このアルバムは「アカシアの雨が止むとき」の後、「落日のテーマ」で終わる。この曲は彼女の曲の中でも、好み度?できわめて上位に入る曲だ。


で、次に研ナオコが中島みゆきの曲を歌ったレコードを取り出した。
「時代」で始まるこのレコードには、他にも「この空を飛べたら」「追いかけてヨコハマ」など、有名な曲が目白押しに入っている。

 

思えば、吉田拓郎の「夜霧よ今夜もありがとう」「くちなしの花」、五輪真弓の「アカシアの雨が止むとき」、研ナオコの中島みゆき曲集と、ここまで聴いたレコードにカバーナンバーがやたらと多い。
オリジナルこそ最高という考え方もあるのだろうが、カバーにはカバーの良さがあるではないか。


次にN.S.Pのファーストライブを聴いた。
ふと、エンディングを飾る「さよなら」を聴きたくなったのだ。そのためにはLP全体を通してエンディングに至った方がいい。

 

当時のライブは、語りが多い。同じジョークの同じ個所で、またもや笑ってしまう。

長らく聴いていなかったから、忘れてしまった隙を突かれた感じだ。笑ってしまった後、「しまった」と思う。(^^;

「さよなら」のエンディングは、同じ歌詞、同じフレーズが延々とくり返されてフェイドアウトしてゆく。
このライブでは、そんなくり返しの途中から、まだ演奏中なのに拍手が次第に湧きあがり、高まってゆく。
熱狂的な拍手ではない。静かな波の音のように拍手が始まるのだ。そうしてそれが歌に重なって次第に高まってゆくさまは、あまりにも印象的だ。


ライブならと、次にモップスの解散コンサートである「EXIT」を聴いた。
彼らの「たどりついたらいつも雨降り」は、きわめて好みだ。このライブでも歌われるのだが、ここでも演奏途中から拍手が沸き起こる。

やがて拍手は演奏自体が聞こえなくなってしまうほどに高まるのだが、高まったあげくに、突然、演奏も拍手も一気にフェイドアウトする。

 

レコード製作において、意図的にそういう編集にしたのだと思うが、最後まで聴かせてくれよと思う。


で、他にも聴く候補のLPを並べていたのだが、ここまで聴いた時点で、飲み過ぎたコーヒーで気持ちが悪くなり、終了となった。(^^;
あらためて、なぜ突然、こんなに何枚も聴くことになったのだろうと思った。

午前中にバイクで三時間ほど走っていた。しばらく走っていなかった道をめぐり、昔住んでいた街をめぐった。
古びた住宅は取り壊され、新しい家が建ち並んでいた。帰路には、海に沿った道を走った。

 

午後からレコードを聴き始めたときには、しかしそんなことは、なにも考え合わせてはいなかった。

午前中のことを思い出しもせずに、ただ聴き続けていたのだ。

 

同時代のレコードから

伽草子 - 吉田拓郎 (0:00) 岬めぐり - 山本コウタローとウィークエンド (2:50) 各駅停車 - 猫 (7:05) 白い冬 - ふきのとう (10:45) おきざりにした悲しみは - 吉田拓郎 (14:21) 落日のテーマ - 五輪真弓 (18:19)