私が住む街から北方、直線距離でほぼ15kmほど離れた茨城県高萩市に、かつて日本加工製紙株式会社という会社があった。
創業が大正時代の1917年だから、ほぼ100年前のことになる。これは1914年~1918年にかけての第一次世界大戦期と重なる。
その後、上場一部企業として、長きにわたって印刷用の紙を製造し続けたが、ついに2002年、いまからほぼ15年前に自己破産した。
おそらく、知らず私も、ここで作られた紙による書籍を読んだこともあるのかもしれない。あるいは、いまもその書籍を所有しているのかもしれない。
印刷用の紙を量産しようと考えた創業者の思いは、多くの人々の生活をどれほど豊かにしてくれたことだろう。
工場の建屋はそのまま取り残され、荒れるがままの廃墟同然になっていた。映画のロケに使われることもあったそうだ。
近年になって、大規模な太陽光発電施設の建設計画案が浮上した。決定すれば、ここにある施設の取り壊しが始まるという。
撮影して、少しでも残したい。
いままでもしばしば、この場所を撮影をすることはあった。もちろん関係者以外立入禁止であり、敷地の外からだ。
今回は、焦点距離の長いレンズを持ち出した。
ジャンルとしては廃墟写真になるのだろう、しかし、やや感覚的に違うのだ。
なお、過去にフィルムカメラで撮影した写真はこちら。
旧日本加工製紙 最後の日々 - 茨城県高萩市 ▽
概念が具体化するためには、まず設計図の作成が必要になる。
いまは遺棄されたこれらの施設を見ていると、どれほど膨大な設計図面が作成されたのだろうと思う。
設計図に従って概念の現実化、具体化が進む。
そこであらゆる部門の力が結集する。くり返される失敗と、それを乗り越えるための情熱が結集される。
その熱は、いまも静かにここに残存する。
夏になれば工場敷地は緑に埋もれていく。ちょっとしたサンクチュアリになっているのだろう、鳥たちの声があちこちにひびき渡る。
鳥たちの声の中、ここに残存する熱はなにを思うのだろう。
苦痛なのか。
だがそれに止まるものではないだろう。
残存する熱が知らせるものは、ふたたび、くり返し始まるものがあるという確信だろう。意志をまとう確信だろう。
無常観。諦念。もしそれが終焉を指すなら、そんなものは必要ない。
無常という概念は、あくまでも途中経過を指すものなのであり、人がこの世にある意味は、いつでも明らかなのだ。
水石の世界 The Art of Natural Stone
~ ワーグナーのマイスタージンガー序曲とともに
◆
使用レンズは次のように組合せた。
マミヤ : 645セコールC 210mm 1:4 N
+マミヤ645→ニコンFマウントアダプター
+ニコン テレコンバーターTC-301 +ニコン→Eマウントアダプター
この組み合わせで、焦点距離420mmの超望遠レンズになる。
こちらの記事でも旧日本加工製紙株式会社の建造物の写真を含めている。
冬風の中、眠りにつくもの - シグマの50mmマクロ ▽
Lマウントのキヤノンとミノルタ - 光はふたたび結像する ◆
以下は、Lマウントミノルタで割愛したもの。
こちらのYouTubeにも写真を収録している。
"It's Alright" - Black Sabbath - [Vinyl record]
◆ 参考リンク
廃墟に関する、yahoo知恵袋Q&Aでの回答