※一次

 ざあざあと降る雨は温い。ぺったりと張り付くような温度で落ちていく。
 静かに絶え間なく続くそれは、傘のないまま中を歩くことをためらわせた。
 走るには疲れきっていて、歩くには濡れネズミの覚悟が持てない。
 どうしようかと目を細めても、空の灰色は厚く塗りたくられている。
 後先考えないで走って、その帰り道。こんな雨に閉ざされては、別れがたきを思わせる。
 握っていたかった手は、しかし、別れのために振られた。会えなくなるわけではない。よほどのことがない限り、また約束をすればいい。
 けれども離しがたかったその手を振ったあとに、こうも降られればやるせなさが残る。
 雨を言い訳にすることもできないまま、ただ帰路についた。未練がましさと足止めの天候に舌を打ちそうになる。
 別れがたきを、思わせてくれるな。