本調査は全日制・定時制・通信制の高等学校及び特別支援学校を対象に行われたにもかかわらず、本調査報告書においては全日制のデータのみ公開され、定時制・通信制・特別支援学校のデータは本調査報告書2ページ「5. 調査協力校数・回答人数」を除き一切非公開とされています。公文書開示請求を行ってもなお、大まかなまとめしか示されない状態です。これは非常に不可解なことですが、フレンテみえも三重県ダイバーシティ社会推進課も、本件に係る具体的な説明をほぼ拒否している状態が続いています。

 当会共同代表熊野は三重県立定時制高校出身の性同一性障害者(FTM)です。中学時代性別違和のため不登校になり、志望していた全日制高校への進学が叶わず、定時制高校への進学を余儀なくされた辛い経験があります。
 定時制で高校生活を送る中で、性的マイノリティに関する悩みや苦しみを背景に定時制高校に進学した生徒たちが自分以外にもいること、また、性的マイノリティに限らず、さまざまな生き辛さを抱えた生徒たちが定時制には多数いることを知りました。そのような経験から、定時制・通信制・特別支援学校には、全日制よりさらにマイノリティ属性の生徒が多いものと考えています。
 実際、開示資料にもそれを示唆する内容がありました。定時制・通信制・特別支援学校の調査結果の詳細は、あたかも“外れ値”であるかのような扱いで切り捨てられて済ませられるものではなく、むしろ非常に重要なものであると言えます。

 開示資料には、定時制・通信制高校の回答の自由記述欄に「こうゆうアンケートやめよう」という意見が記されていた旨の記述もありました。少なからぬコストをかけ、生徒たちに辛い思いをさせてまで調査しておきながら、その結果をほぼ何の説明もなく伏せて済ますというのは、極めて不当であると言わざるを得ません。このような扱いをするなら、そもそもなぜ定時制・通信制・特別支援学校調査など行ったのか、甚だ疑問ですが、それに対する回答も拒否され続けています。三重県教育委員会も「本調査は、あくまでフレンテみえが共同研究者とともに行ったものであり、県教育委員会はそれに関して見解を示す立場にないと考えます」等と責任逃れをするありさまです。

 定時制・通信制・特別支援学校の生徒たちを踏みにじるこのような行為が、「人権」「ダイバーシティ」の名のもとに、公的機関によって平然と行われている実態。一体誰のための、何のための人権施策なのでしょうか。

 

 

概要まとめ記事一覧
(1)隠蔽される重要データ&民間事業者への不適切な情報供与
(2)男女共同参画センターが(身体上)女性を軽視している問題
(3)定時制高校・通信制高校・特別支援学校の生徒たちが踏みにじられている問題 ※本記事
(4)調査結果が三重県教育委員会に還元されていない問題
(5)開示ミスによる情報漏洩
(6)朝日新聞第1報の裏側&「新潮45」“杉田論文”との関係
(7)おわりに~公的機関の隠蔽体質と事なかれ主義~