象の親子が、舞台から去ると、スポットライトが消えた。そして、ほどなくして再び灯る。しか
し、舞台には何もいない。次第に客席がざわつき、乱暴な声を荒げるものもいた。
そんな中で、サルの団長の声がマイクからささやくように流れる。
「ここには、もう一生懸命にやっている仲間がいます。だけど、目で見るだけではその姿を見つ
けることができません。そこでクイズです。どうしたらその姿を見ることができるでしょう。
さあ、ごゆっくりぞうぞ・・・」
たま は ぎん を覗き込む。
「ねえ、とうちゃん。何言ってるのか さっぱり わからないよ。わかる?」
「ああ、どういうことだろうな・・・」
ぎんは 目をつむる。こうでもない、そうでもない。頭でいろいろ考えていると、急に何かが
パタパタと走っている音が聞こえた。ぎん は 急いで目を開けて、あたりを見渡した。しかし、
辺りは皆 目を閉じたり、舞台舞台を食い入るように見つめていて、静寂に包まれている。
「とうちゃん。土の におい が してきたよ。」
たま は クンクンと鼻をならす。ぎん も 同じように鼻をならす。
「本当だ。」
ぎんはうなづく。
客席から 「見えたわ!!」と叫ぶ声が聞こえた。そして、「見えた!!」という声が次々に
客席から弾む。
「あーん。とうちゃん。早く見たいよ。」
たま が せかす。ぎん は 構わず 目を閉じる。すると、ぎん の皮膚が少し震えた。鋭い
鳴き声が皮膚をなでたのが わかった。
「おおかみ!!」
たま は 驚いて 肩をすくめる。
「さあ、これが答えです!!」
サルの団長が叫ぶ。
ステージの天井から、色とりどりの花びらが雪のように舞い始めた。花びらたちは、オオカミの
体に抱き着いた。カタチなきオオカミの姿は、花びらをまとい現す。花びらはオオカミの、オオカ
ミは花びらの化身となった。
オオカミはステージ上をすごい速さで走り、何度も宙返りしてみせた。
「さあ、この素敵な仲間に拍手を!!」
サルの団長の声に、会場の空気が割れそうほど拍手がなる。
オオカミは客席を見渡してから、遠吠えをした。客に声は聞こえなかった。代わりに、うれしく
も、哀しい声が充分に見え、届いたのだった。
(つづく)