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いちにち。のんびり。ときどきものがたり

車椅子ユーザーの のんびり日記とときどき綴るものがたり

「では、行政官は橋野さんの面談 お願いいたします。」
きっぱり枝里さんはそう言って新しいグループ電話会議を立ち上げた。
会議時間を1時間に設定すると、後半の30分は私も加わらせていただきます。松田さんの面談をあと30分しますので。と言って枝里さんはそちらのグループに戻る。

美里行政官との面談です。というアナウンスが流れたのはあたしの ライフチケット、という端末だ。ほとんどの国民が持っているのだけれど、それは、追々。
使いきりパスワードが発行される。
行政官面談です。同意しますか。 同意しなければ先へは進めない。同意。

すると、先ほどのやけに浅黒い顔のひと、登場。

「美里さんでいいからねぇ~。橋野さん。」
はい、よろしくお願いします。あたしはぺこりと頭をさげた。

話を始める前に個人情報開示同意書に署名した。なんだか条約調印式みたいだな。と思いながら。こうして美里さんは、あたしの端末にアクセスできる権利を得る。勝手に見られない仕組みなのだ。

さて、橋野さん。ワークボランティアチケットがたまっているようだね。ざっと時間にして2年くらいか。と、美里さんが言った。
「よくわかんないんですけど。あたし、ボランティアしてないです。」そうなのだ。なんだかよくわからない。勉強するいい機会だ。

「ワークチケットは仕事の質に応じて貯まっていって給料換算される。ここまではいい?」
「はい。」
「ワークボランティアチケットは、きみが資料をコピーしたり、残業したり、仕事用の酒宴にかり出されているときに自動的に発行されている。」それで。
「橋野さん、きみは合法的に職場を休職して、今の会社に籍をおいたまま、他の職場で2年、働ける権利がある。会社はそれを妨げられない。」
わかりました。とあたしは言った。それなら。
「あたし、枝里さんの補佐をしたいです。松田さんのそばにずっといることは可能だけれど、松田さんがいるのは身体的不自由者依存リハビリ・ケア施設でしょう」
よく勉強したね。美里さんがあたしに言う。

依存心の克服プログラムの中にいる松田さんが新しいひととかかわると、今はちょっと危険かもしれない。なによりあたしがしたいことは、ここでできることは。

「枝里さんの下でなら、利用者さんのことも、考えられて行政の側にも、いられますよね?」
きみの気持ちに無理はないね。
美里さんが確認したのはそれだけ。
「枝里さんを毎日、松田さんのプログラムに参加させることで松田さんのきみと一緒にっていう希望も叶うだろうし。じゃあ、決まり!」

端末を使って、わたしのすべてのデータを沖縄側に移して。

「行政との調整は僕に任せてね!」
言うやいなやさっさと行政官は退席してしまった。と、同時に 厚生行政職補佐の辞令が枝里さんから、おりる。話の流れを見た枝里さんが途中から加わって。辞令を書いてくれたのだ。

みほこちゃん、いえ橋野さん、よろしくね。と枝里さん。
住宅は、わたしの家の隣近所だね。という。
「さて、全部見てもらうわ。面談に戻りましょう。」私たちは松田さんの面談に戻る。

        わん、だふるらいふ5へ続く