松田さんのグループ会議にもどる。なぜだかみんな笑顔だ。
「どうしたんですか?みなさん。」
「さて、と。サポーターズ会議を開かねばなりませんな。」困った口調ながらもいちばん嬉しそうなのは、理学療法士の金城さんだ。
「ご本人の意思を尊重できて、私たちも自然にケアできるのがいちばんですが、一歩前進ですね。」これは担当看護師の山城さん。
松田さん、よく話してくださいましたね。と言っているのは島さんだ。
ここに来てから、自分のことを何一つ話せずに、こころを開かず、何かを自分からする、と言うこともなかった。それが、松田佳英さんという女性だったそうだ。
皆さん松田さんのことを知りつつ、本人の、語り出すのを待っていたらしい。
枝里さんの端末に情報が追加され、私にも、共有してくれた。
松田佳英さん 22歳
琉南大学 教育学部在籍 専攻 特別支援
専科 美術 えっ?
みほこさん、でしたね。佳英さんが話しかけてくれた。機械は佳英さんの声を再現している。
わたし、はじめて、すこしだけ、こうなってしまったことへの くやしさが小さくなりました。混乱しているけどわたし、こどもたちにあうまえに、自分のからだで、感じたい。
すごく、まだくやしい、かなしいけど、まずは、わたしを、わたしがうけとめたいです。
佳英さんの声には意志が感じられた。
生易しいものではないのだろうな、とあたしは思う。いっぱい悲しんでいっぱい笑うのだろう。
りうが、にやっと笑って。
お姉さん、俺がついてるから。こいつは。
リハビリドッグとして、こいつは佳英さんのそばにいることになった。
佳英さんのワンダフルライフ、一歩目。
踏み出せた勇気に拍手を送ろう。
それは、佳英さんが作り出すものだから。
「ゆっくりでいいです。佳英さんのこと、見てていいですか。」もちろん。と佳英さん。
俺も頑張る。これはりうだ。せいぜいしごかれなさい。
佳英さんが笑った。佳英さんにしか作り出せない人生。どんなことが起こるのだろう。
それは、また、いつか。
きれいな空ね。そういった枝里さんの目にも、こころを動かされた涙が浮かんでいるのを、あたしは、知っている。
わん、だふるらいふ 完