深夜の巡回病院は、いつもよりも不気味な雰囲気に包まれていた。看護師の小田は、足音を立てずに廊下を歩き、患者室の扉をひとつひとつ確認している。しかし、どこか不穏な空気が漂っているように感じた。
「…っ!」
小田は目の前の患者室の扉がゆっくりと開くのを見て、思わず声を上げてしまった。そこには薄明かりの中、白い布に包まれた患者が横たわっていた。
「誰…そこにいるのは…」小田は恐る恐る患者室に入り、白い布をめくると、そこには誰もいなかった。ただ、ベッドの上に残されていたのは、血まみれの包帯だけだった。
不気味な事件は続いた。夜が更けるにつれ、巡回病院には幽霊のような存在が現れては消えていく。看護師たちは次第に恐怖におびえ、夜間の巡回を拒否する者まで出る始末だった。
ある夜、小田は再び患者室を巡回していると、一室の扉ががたがたと音を立てていた。警戒しながら扉を開けると、そこには幼い子どもの姿があった。子どもは小さな声で囁くように言った。
「お姉ちゃん、ここにいてくれる?…こわいんだ…」
小田は驚きながらも子どもの手を取り、安心させようと声をかけるが、突如として子どもの姿が消えてしまった。代わりに部屋中に幽霊のような影が舞い上がり、小田を取り囲んでいく。
小田は絶叫し、逃げ出そうとしたが、どこかで足をすくわれて転倒してしまう。その時、幽霊たちが一斉に襲いかかってきた。小田は必死に抵抗するが、幻覚のような光景に心を乱され、意識を失ってしまった。
翌朝、小田が目を覚ますと自宅のベッドで寝ていた。深夜の巡回病院での出来事は一体何だったのか、小田は理解できないままだった。しかし、体中には異様な跡や傷が残っており、あの幻覚がただの夢ではなかったことを思い知らされるのだった。
夜間の巡回病院で起こった恐怖の一夜は、誰にも語られることはなかった。その事件以降、小田は夜の病院や、幻の中で子どもの声を聞くことがあっても、決してその扉を開かないことを決意した。