あの世行きバスは、夜の街をひっそりと走る。その姿は影のように静かで、ただひたすらに進む。誰もがその存在を忘れかけていた、あの世へと続く扉のような存在だ。
ある晩、深夜のバス停に一人の若者が立っていた。彼の名は悠真(ゆうま)。彼は仕事からの帰り道、ふと気がつくと知らないバス停に立っていたのだった。周りは静まり返っており、どことなく異様な雰囲気がただよっていた。
やがて、遠くからバスのエンジン音が聞こえてきた。それはまるで呼びかけるような響きだった。不思議に思った悠真は、バスがやってくるまで待つことにした。
やがて、バスは停留所に到着した。その姿はあの世から来たかのような、異様な存在感を漂わせていた。ドアが開くと、中からはひっそりとした幽霊のような姿の運転手が現れた。
「あの世行きバスへようこそ。次の停留所は死者の国です」と、運転手は静かに告げる。
悠真は驚きながらも、なぜかバスに乗り込む決意をした。バスはゆっくりと進み始め、窓の外には見たことのない光景が続いていた。街灯もなく、ただ暗闇がただよっている。
数時間が経った頃、バスはある場所に到着した。運転手が言うには、ここが死者の国であるという。外を見ると、そこは広大な墓地に囲まれた場所だった。どこまでも続く墓石を見つめながら、悠真は不安を感じ始めた。
「ここで下車しろ」と運転手が告げた。悠真は躊躇いながらもバスを降りると、バスは再び進み出していった。一度バスが消えたかと思うと、そこにはもうバスも運転手もなかった。
ひとり取り残された悠真は、不安と恐怖に包まれながらも、歩き出す。彼は逃げ場もなく、ただどこかへ向かって歩くしかないのだろうと感じた。
その後、何日が経ったのかもわからぬまま、悠真は死者の国で彷徨い続けた。彼の姿は、やがてその墓地に埋もれたかのように消えてしまった。
そして、あの世行きバスは夜の街をひっそりと走り続けるのだった。その存在を知る者は、ほとんどいないまま、ただひたすらに進む。誰もがその存在を忘れかけていた、あの世へと続くバスの姿は、ひとりの若者のみが知ることとなった。
終わり