「セクシー田中さん」の漫画原作者である芦原さんがお亡くなりになった件、なかなか収束がつかずニュースで話題になっていますね。原作とドラマ制作についての齟齬については本当に難しい問題があると思います。しかし、原作者である芦原さんは原作から乖離することを嫌がっていたわけですよね。いずれにしても、出版社の方って、原作者とドラマ制作会社、または翻訳者等、原作が飛び立つ際にはそれらの仲介に立つのも仕事だと思うんですよね。原作者の担当編集である小学館の方は、ドラマ化に際して脚本家に対して原作者の意向をきちんと伝えていると言っていますが、脚本家の言い分を聞くと、どうも釈然としないものを感じます。小学館とか日本テレビ、業界では最高峰の会社にどういう問題があったのか興味のあるところです。日本テレビ内に特別調査チームが出来たそうですが、期待したいところです。

 

 私はドラマ制作の現実というか実務については知りませんが、何はともかくお金にしたい、それが皆の幸せになるんだというような思想を第一にしているのでしょうか。それ自体は誤っているとは思いませんが、この問題の根幹にあるのは著作権についての正確な理解だと思います。難しい問題ですね。

 

 そもそも著作権とは何か。これは知的財産権の一つですが、他の典型的知的財産権とは少し様相が違うような気がしますね。そもそも知的財産権とは何か。知的活動から生じた財産的価値を有する権利の総称というらしいですが、法律の定義というのは漏れがないように故意に抽象的に記すようですが、抽象的過ぎて具体例がないと理解できないことが多いですね。更に知的財産法の理解を困難にしているのは、その具体例についてもピンとこないところにあるような気がします。

 

 ここでは、知的財産権には主にこういうものがあるという紹介にとどめます。特許権、実用新案権、意匠権、商標権、そして著作権が主だったものです。著作権といえば本や音楽、映画、写真、プログラム等の創作物を保護するものでイメージが浮かびやすいですが、それ以外の知的財産権については具体例をイメージするのが難しいですね。ネットで、米がつきにくいしゃもじというのは特許権だが、バネが内蔵された、朱肉がいらないハンコ、シャチハタは実用新案権の対象になると記されているのを読みましたが、科学に対するセンスや常識に欠ける私にはよく分からないや。

 

 まあ、前四者は産業知的財産権と言い、産業の発展について不可欠な権利だとされます。パソコンやスマホについての新技術を発明ないし考案しても、すぐに誰かに真似されては本人は発明も考案もする気もなくなってしまいますよね。発明ないし考案したものは、ライセンス契約、つまりそれら自分の発明、考案したものを誰かに利用させることに金銭を得るといった契約によって大きな利益を得ることでやる気が出る、そして経済、産業は発展するという事だと思います。

 

 もう大昔の話ですが、経済的に日本に負けそうだったアメリカは、レーガン大統領時代、復活への政策的一端としてプロパテント政策、つまり特許を重視するという政策をとったそうですね。国家レベルで知的財産権の保護強化に徹しだし、真似している他者に対してはどんどん莫大な損害賠償金を取っていったという歴史があります。

 

 まあ、特許権や実用新案権などの保護が世界の経済、産業発展に大事なものであることは分かるのですが、著作権はどうなのでしょうか。本や音楽、写真などは一言でいえば産業発展というよりも文化発展に資するものだと思います。産業よりも文化が劣るとは思いませんが、著作権は典型的な知的財産権である特許権や実用新案権等に比し、独特な法的性質を有しているような気がするのは私だけでしょうか。

 

 前置きが長くなりましたが、著作権の話に進みます。
 

 著作権というのは、何らかの表現を経て著作者の思想的感情を盛り込んだ著作物を支配する権利であり、代表的なもので言えば、音楽・小説・映画・写真・コンピュータープログラム・建築物などがあると思います。

 

 そして、著作権は 大きく分けて主に二種の権利から成立するとされます。狭義の著作権と著作者人格権から成るわけですが、法律ではこの狭義という言葉を多用して分かりにくいですね。だから、ここでは著作財産権と著作者人格権の二種という表現をしたいと思います。

 

 しかし、この両者の違いって難しいですよね。私もよく分からないや。よく分からないがイメージするとこんな感じです。著作財産権は財産権であり、著作者人格権というのは人格権です。では財産権と人格権の違いって何でしょうか。少し難しく言えば、譲渡、相続できるか否かという点かな。例えば、自分の持っている本や車、貸金債権等は他人に譲渡できるし、相続もできる。しかし、扶養請求権とか婚姻上の諸請求、それに年金受給請求権なんていうのは、その人個人のものであり、譲渡も相続もできないわけです。

 

 その点から考えると、勝手に人の作品を複製して売りさばいたり、自分のブログに載せて集客を得たりするのは、前者著作財産権の侵害という事になります。そして、作家は著作財産権を他人に売ったり、貸してあげて収益を得るという事もできることになります。

 

 しかし、著作者人格権の方はそうはいかず、今回セクシー田中さんで問題になっているのも、こちらの内容の権利です。著作者人格権の内容を分類すると、それが全てではありませんが、主に、氏名表示権、公表権、同一性保持権であり、この同一性保持権が問題になっているということです。この同一性保持権というのは、著作物の内容やタイトルは自分の意思に反して勝手に変更されないという権利であり、裁判所はかなり厳格に、つまりほんの少しでも同一性に反してはならないという判断傾向にあるそうですね。今回の件では、原作者の意思に反して、はたして、そういう侵害があったのかどうかが問題になっていると思うのです。


 作家によってはドラマ化について非常に大らかな方もいるそうですね。例えば、映画化、テレビ化によって多少原作改変があったとしても、それを契機に多くの人が原作を購入してくれるというメリットを考えるということでしょうか。
 
 ドラマ制作の困難さや慣行については分かりません。分かりませんが、作家を例に挙げれば、無名であろうとも多くの方はその作品について、変な言い方ですが多層的部分的に脳裏に焼き付き離れぬものがあると思います。脳裏に焼き付き離れぬもの、それも一つの映像だと思うんですよね。まあ、そういう脳裏の映像、そういうものもあるということだけでいいから、ドラマ制作に際しては考慮することが大事なんじゃないかと思いますね。

 

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