それは私がこの家にやってくる前の夜のことだった。
銃声と共に 希薄になっていく意識の中で私は昨日の夜のことを回想していた、、。
彼。
はおだやかな人物に違いなかった。
何事もなく付き合い、
波風なく過ごし、
楽しい場所へ行き、
多くの時間を 笑い合った。
彼は ありきたりの清潔な 2 LDK に住み、
私の住まいとを行ったり来たりし、
2年の時が過ぎた。
しかしそれは突然に、
2人の行きつけの中華の店で豆花のデザートを食べ終わる頃に起きた。
彼 は このふたりを 解消する
と言ったのだ。
私は入り口の置物の虎が一瞬吼えたように思った。 しかしそれは私の心の虎 だったかも知れない。
どうして?
と聞けなかった。
聞くには 彼 を知らなすぎた。
知らない?
2年も一緒にいたのに??
聞くのが恐ろしかった。
恐ろしい??
あんな 温厚な人なのに?
なぜかはわからないが
私は 黙々と豆花のデザートを平らげ
出ましょう。
と言った。
結婚を急いではいないが、いずれは、
と思っていた。だって私はもう34 なのだ。
男の32はまだまだ新しい仕事も始められるし、新しい彼女も探せる。
けれどなぜか、
女が当たり前の幸せを願うには、私のこの地点は、 チェック ポイントの気がした。
男の32と女の34の人生の分かれ道を、
感じざるを得なかった。
だからこそ私は聞くべきだったのだ。
なぜ私と別れるのか、 これからどうするのか、私に悪いところがあったのか、この2年は楽しかったのか、誰か好きな人が他にできたのか、いつ、このことを言おうと思いついたのか、この先一緒でいると何か不都合なことがあるのか、
聞きたかった 。
聞いて聞いて聞きまくりたかった、 泣きながら しがみついて聞きたかった。
しかし取り乱している一方で、そんなことは微塵も感じさせない落ち着き払った 私が、別の場所には住みついていた。
そのときの私は
触ると凍りつくほど冷たい炎に似て、
烈しく踊り狂いながら死んでいく踊り子に似て、
眼を見開いたまま、
灼け付く酒を煽る夢をみて笑っている女にも似て、
夢中で掘り続けている土の中から出てきた靴に蹴り上げられ、その脚を無中で喰らっている人にも似て、
泣こうが、ワメコウガ、 わめき散らそうが
壁を打ち抜こうが、この人生を否定しようが、思い出のすべてを葬り去ろうが、思いの果を抹殺しようが、
腐りかけの癈人になろうが、
何も変えることは出来ないだろう。
今は。
幸せになりなよ。、、、
彼は私の椅子の方へやってきて、
冷たい中指で私の前髪を直した。
思い過ごし かもしれないけれど
この時なぜか私は、
彼が私に沢山の未練を残している、
ような気がした 。
多分 、思い過ごし なのだけれど。
私は伝票を持って立ち上がった。
え?と小さな声でいう彼に、
いいのよ、 奢るのも これが最後だし。
なぜか私たちは今まで、彼に余裕がある時は彼が支払い、 私が払いたい時は私が支払いをして外食し、何の不都合 も感じなかった。
と思いたかった。
今になっては全てがわからなくなってしまったが。
外は雨が降っていた。
こんな夜は 見たことがないと思うほど暗い夜だった。
雨の水が固まりになりながら
側溝に流れ込んで行った。
汚さも悲しみも 押し流していく水。
泥水になって流れていってしまいたかった。
駅で別れるとそのシーンが頭にこびりついてしまいそうで 、このままいるといつの間にか 号泣してしまいそうで、
私はやってきたバスの閉まり始めたドアに飛び乗った。
じゃあね、元気で!!
閉まったドアのまえで手を振る。
驚いた 彼の顔。
私の貸した傘を持って、彼はそこに立っていた。
バスは渋滞でゆっくりしか進まなかったが、
彼はオレンジ色の傘をさして 、私のバスを見ながら同じ場所に立っていた。
残酷!? わたしは残酷か。
いやちがう。彼 が残酷なのだ。
それが彼の顔を見た 最後だった。
彼の 顔 を見た最後だった。
バスの外の景色は雨に流され、
涙は止まらなくなった。
どうやって一夜を明かしたのか
どうやって時間をうしろへやったのか憶えていないが、
今日はとてつもなく長い1日だった。
多分今日の昼間、 私は普通に仕事をしていたのだ。
仮面の下が血まみれの私なのに。。。
つづく。
(嫌な話の流れですが、つづきます。
いい話になりますように。すぐにはなりませんが、基本ハッピーエンドをこころがけています。)
🥰🥰🥰










