とうとう。
誰も歩かない路に密やかに咲き忍ぶ、見慣れない花を、僕は見つけた。


臆病で小さく、その実思いやり深い、裸足の少女を、僕はやっと掴まえた。




そんな君を知っていたのに、知らない振りをした。

そうしなければ、嫌われてしまう、
この関係も終わり、君が去って行ってしまう、そんな気がして、僕は気付かない振りをしたんだ。



けれど、君はほんとうの君を見つけて欲しかったんだね。





だから、僕は掴まえたよ。



僕は君の全てを本当は知っていると思い込んでいたが、現実には何もわかっていなかった。



華やかな君だけを見ていて欲しいのだと、




勝手に思っていた。






君は、





私はそんなじゃないの、本当は。



裸足の少女はここにいるよ、って、



いつも言っていたんだね。




遅くなってごめん、



ほんとうに、ごめんね。




僕は迎えに来たよ。






そして、僕は薗子の背中を抱きしめた。






帰る人々の中に見慣れたジャケットがやって来るのを発見する。

抱き合っている僕たちを見て、笑いながら投げキスをしている。
紳だ。
薗子は静かに頭を下げる。




僕が声をかけようとする間もなく、
紳はきびすを返して人々の中に紛れて行った。


後ろ姿のまま頭の横で指を二本振っている。

相変わらずキザなやつだ。





チャオ!




僕も小さな声で言った。





泣きすぎたから、声がかすれている。

そんなに泣いたらお腹がすくでしょう?

しかしお腹の空いている僕は聞いていた。
 
「もうすこしだけ、こうしていていい?」





彼女が部屋を越して行った時も涙は流さなかったのに、今日は一体どうしたんだよ。



こんな展開になるとは思わなかったから
ハンカチも持たずに来ていたのに。




薗子は教会の中にバックがあると言った。




そうだった。
どうしよう?

少し慌てる僕に、




教会よ。心配しないで。と彼女は言った。




僕らは、誰もいなくなった教会堂に入って行った。




彼女が椅子の上にぽつんと残されたバックを取りに行っている時、





僕は祭壇の前に跪き、心の内で今日のこの日の出来事を神に感謝をし、祈りを捧げていた。




もう木枯らしの季節だというのに、


小春日和のような昼下がりはステンドグラスから淡いひかりが差し込んでいた。





小さな少女のままの彼女の上に。


そして、


廻り道しながらも、彼女を手さぐりでやっと掴まえた僕の上にも・・・。





今は
平等にひかりが満ちていた。













それはまるで、マイナーコードの讃美歌が、最後の一小節でメジャーコードに変わる、ピカルディーの響きに似ていた。




そう、沢山の雲の隙間から、たった一筋のひかりが差しているんだ。





その雲の上では、きっと天使たちが僕らをみてクスクス笑っているに違いなかった。






                                                Fin




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[お読み下さった皆様、永い間、ひふくのもんしょう  にお付き合い頂き、有難うございました。
しかし、シツコイようですが、この後又少し、種明かしみたいな.追加の章があります。又次回もよろしかったら(是非)お訪ねくださいね。2人のその後も描かれております!
でわでわ、又。
チャオ~!!!









前回この章が削除されてました!
ハッカーか、アOブロさんのどちらかなのですが、思い出して書きましたので、そんなに変わらないと思います。
エロいとか、政治的発言とかなければ、削除しないで下さい。
昔からアOブロさん、個人的な見解で削除しますが、人々を洗脳したり誘導したりするような政治的、宗教的な記事とか、明らかに万人が見て不快な感じのきわどい表現とかをしていない限り、安易な遊び感覚で削除しないで下さいね。しかも今回は勝手にログアウトされ、追い出されてました。
facebookもyoutubeもそんな事はしていません。
私達ブロガーより、管理者さんの方が、反社会的威圧行動をとっているようにおもわれます。
世の中のコミニュティー代表の企業としてもっと、軸のずれない正しい判断をして下さい、お願いします。



皆様、すみません。ここから本文です。l⬇️⬇️⬇️⬇️⬇️








なぜか僕は、薗子からもらった蝶のシールが剥がされ、緋蝠の紋章のついた封筒を握りしめていた。






階段を駆け上がり、大きな両開きの扉をそっと開けてみる。





人々は静まりかえって、牧師の話を聞いていた。
そして突然、とも思えるタイミングで皆は起立し、讃美歌を歌い始めるのであった。




後ろから二列目の端の席に姿勢良く立って歌っている女性の肩に

静かに近づく。





教義用の白いベールをかけた人にそっと指をかけた。


彼女は振り向き、風でベールが



揺れる。















れあ。













「ごめんなさい。」







聞き取れない、消えてゆくほのほのような声だ。


僕は彼女の腕を引いて教会堂の外へ出た。




強く腕をひいたために七部袖が引き上がり、肘の内側に封書と同じ赤い蝙蝠のあざを見つけてしまった。






「わたしを、許さないで。
怒って、叩いて、別れても仕方ない。
貴方を試した
わたしを許さないで。」






「貴方は本当のわたしを愛してくれているのかとても知りたくなって、
その事を確かめなければ結婚など出来ないと思うようになって、
ほんとうのわたしを見せたらほんとうのあなたも見えると思って、


試してしまった。」




「そんな必要はなかったと、後でわかった。でもその時はもう遅かったの。」





許さなくていいの。






と  れあは言った。





僕はただ、首をふるばかりだった。




もう、あふれてくる涙を止める事は出来なかった、
れあが部屋を去っても涙を流す事はなかったのに。


なにも、
いわなくていいよ。


わかってるよ。







僕は彼女のベールの両脇から頬に手のひらを当てて、彼女の鎖骨に顔を埋めて泣いていた。




れあ、れあ、


本当に君だったんだね。
君で良かった。
もう、僕は、、、




泣かないで。







わたしが悪いんだから。

もう、泣かないで。





教会の鐘か12時を告げ、
人々が両開きに開かれたドアから出て来る。




片扉の隅で泣いている男と、それを胸で泣かせている女が、たまにTVで見かける事のある人物だなどとは、誰も気づかず通り過ぎてゆく。




ごめん、遅くなったね。





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祝福が僕に降りてきたかのようだった。







前記
おかげさまで、 先週のブログのアクセス数が1000を超えました!
前回の投稿が、過去6年ほどのブログの中でアクセスが1番多かったようです!初め、誰も読んでくれていなかったのに、
こんなつたない文章を読んで下さっている皆様、イイねを下さっている皆様に心から御礼申し上げます。
有難うございました!
本当に感謝しています。





緋蝠の紋章 (14)




高速を降りて行くと、そこはもう横浜の街だった。
子供の頃は母に良く連れて来てもらったが、今は雰囲気がやや変わった。




僕はまだ元町に、老舗の食器店やここにしかない服のブランド、上品なご婦人のバッグの店々などが軒を連ねていた頃の横浜が好きだ。
それは、古き良き時代の上等な外国の香りがしているからだ。



しかし、逆にその頃の中華街は、裏通りに雑多な怪しい人々がウロついていて、今の小綺麗なその街と豊かな中華系三世の人々には想像も出来ない光景だったかも知れない。





薗子と待ち合わせをしているのは、山手あたりのレストランで、
繁華街からはやや離れている。


そこは彼女の指定なので、僕の知らない店だった。



紳にナビで調べてもらい、分かり易い場所である事を確認した。
横浜は、
僕がまだ見た事のない彼の歴代のガールフレンドと、しばしば来ている紳の方がよっぽど詳しいと思った。




「もうすぐ着くぞ。」



紳は路肩に車を停めた。



「俺はお前の保護者じゃない、
どうする?」



もちろん、紳にレストランまで付いてきてもらう気はなかった。
いい加減、ひとりで行動しなければならない。



心拍数が上がる。


だが、時間は中途半端に早かった。




あと、38分くらいあるか、と紳が僕の心を探るように言う。





少し向こう、この道に今、カフェがあったよな。
戻るか。
時間調整しよう。



言い終わらないうちに紳はUターンしていた。
いつも決断が早い男だ。
キュルキュルとタイヤの鳴る音がして、僕は又、ヤツに惚れ直す。



カフェは、昔ながらの珈琲ハウスのような雰囲気で、三角屋根が可愛らしい外国の屋敷のような造りだった。

庭も花壇も良く手入れがしてある。





「瀬田のカフェで見せようと思ったのだが、、、やめてしまった。」



僕は薗子から送られて来た、最初の頃のファンレターのようなものを二通、紳に手渡した。



紳はしばらく手紙を見続けていた。
一枚、二枚、と彼にしては珍しく真剣に見て行った。
黙って、次の封書も見ていた。



「お前がこのファンレターに心惹かれるのが、わかった気がするよ。」
と、ぽつりと言う。



俺も今まで、、
と紳はかみしめるように言う。

心優しいファン達からステキなレターを沢山貰ってはいる。
だがこれは、そのどれとも違っている。





優しくたおやかで、温かく懐かしい。


思慮深く控えめではあるが、お前の近くに手を差し出し、地にしっかりと足のついた女神のようなけはいがする。


何だか知らない人のような気がしないよ、




と紳は言った。




不思議だった。

過去の経験上、紳はいつも、
「お前は、甘ちゃんだ、」と言う。
騙されやすいし、感動しやすい。お人好しで、考えが甘く人にも優しいが、自分にはもっとずっと甘い。
アメリカの砂糖菓子くらい甘い!



と言われていたが、


今回ばかりは僕と紳は、
感性が一緒だった。



そんな時も、ないといけないよ、紳。
僕らは四歳の頃からずっと一緒に同じものを見て、ウチの母親のおやつを食べて育ったんだぜ。
それにしては二人は性格が違い過ぎるが。
と心の中で思っている。




そうだ、




それで手紙の彼女だが、途中ずっとメールでやりとりしていたのに、最近又、手紙が来た。



それが、これだ。




紳に三通目の手紙を見せる。


「ふうん、逢えるのを楽しみにしています、と言っているけど、困惑も見え隠れしているな。」

「それは僕が れあと別れてしまったのは本当かと気にしているからじゃないのかな。」


誰だって、そんな事を知っていたらなんとなくプレッシャーを感じるだろ?

そうだな、
紳は言った。
だが何となく不思議な気がするな、彼女。



そうか、普通の大人しい女の子だ。



そんなフツーの女の子にお前がこんなに本気で惚れるか?


でも、変わったところは見受けられないな。写メの姿を見ても、おとなしそうな、むしろ古めかしいような普通の28才のコだ。
けれど、僕の好きなもの、考えている事、やりたいと思っている事やこうしたらいいと思う事などを知っているような気がする。




ふうん。

紳は最後の手紙の封筒を嗅いでいた。

いい匂いがする。

何だか懐かしい香りだ。






おい。
見ろよ!?



封書の裏に、美しい蝶々のシールが貼ってあった。



そうさ、彼女はいつもセンスのいい書箋に素敵な封筒、
一番初めは見た事もないような雰囲気のある花のシールだったのさ。







紳は、何を思ったか、最近彼女から来た封筒のシールを剥がしていた。


欲しいのか、


僕は笑いながら言った。



いや!下に何かが、、、





その直後の紳のあっけにとられたような顔は僕の印象の中に、写真のネガのように白黒逆に焼き付けられた。



何?




これを、、、


見ろよ。



え?



アゲハ蝶のような美しい蝶のシールの下に。



赤いコウモリの柄が





描かれていた。









え?





僕は他の言葉を飲んだ。


しかも、



紳は言った。この名前、
その子って読むんだろ?



俺がランスの街で聞いた少女の名前、確か、、、




ソノコだったぞ、ソノコ フジモト、だったか。

そうだな。そう記憶している。







だけど、、、


僕は一瞬、わけがわからなかった。



紳がパリで聞きに行ったのは、れあの幼い頃の話だろ?



れあが、                   ソノコ?





そうだ、本名はその子だと、聞いた事はなかったか?




ない。




その時、薗子からメールが来た。




今、教会のミサに来ているのですが、牧師様のお話が今日は長くなり、いつものように、11:50では終わりそうになく、レストランのすぐそばの教会なのですが、12:00に、10分くらい遅刻してしまうかも知れません。
お待たせしてしまって申し訳ありませんが、お待ち頂けますか?



とあった。



れあ?教会?薗子?
僕は、この店の庭の向こうに、さっきから景色の一部として見ていた教会を指差し、紳に聞いた。





教会って、近くに沢山はないよな?



沢山は、、、、、ないだろ。

約束のレストランならこの道沿いだが、車で2分だぞ、行くか?



気を使って、いつになく慌てる紳に。



いや、ここからは自分で行くよ。
あの教会に彼女がいる!




もう一度戻ってテーブルにいる紳に言う。
勘定、立て替えといてくれ。











だからだ、だからなんだ。



だからだ、だからだったんだ。



そうだったんだ。
だから、ここに来たんだ。
だから、ここまでやって来たんだ!






ただ、僕は走っていた。







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