滑走路のような夜道だった。
予感がした!
コメカミが冷やりとするような
よくない予感。
疑いをふり払うように、
わたしは鼻歌を歌い
見慣れた角を曲がる。そのとき。
黒猫が前を横切った気がした!夜道に黒猫!?
オレオ!?
急ブレーキをかけ、道の端に
消えた黒猫を探そうとする。
あっ、
たった7〜8メートル先に反対車線から人間が滑ってきて、
道端の生け垣に当たる手前で、
止まった!
だ、大丈夫ですか!?
と尋ねるわたしに。
彼は、バイクが滑っちゃって、
と、失笑し、バイクに戻って行った。
もしあのとき、
黒猫が横切らなかったら、わたしは彼を
轢いていた??
黒猫、を探さなくちゃ。
この道の端?
生け垣の中??
もっと向こうへ行ってしまったの???
工場の敷地に逃げた?
何としても探し出し、
お礼を言うつもりだった。
危ないところを救ってくれてありがとう、と。
きっと、夜な夜な亥の刻に出歩いているノラ君なのだろう。
夜の路地に黒いものを探す。
それは漆黒のピアノの上に置き忘れられた
タンザナイトの指輪を探すみたいに。。。
オレオなどいない。
彼は5年5か月私の家に来て、肺に影がはびこり、虹の橋を渡った黒猫。。。
もし私がこの近くの路地で、
今宵黒猫を見つけても、それはオレオではない。
それでもわたしは、亥の刻参りの黒猫を探してお礼は言いたかった。
道の端、草の陰、工場のエントランス、側溝、
街灯の下、、、、、
街灯の下????
街灯の下??!!!?
オ・レオナルド・ビスコット卿!!
小さな黒猫を探していたはずなのに、
街灯に寄りかかっている猫男爵は身の丈170センチ以上はあると思われた。
お久しぶり。
ビスコット卿は、うやうやしさ16%、
不敵さが38%懐かしさ46%くらいの割合で挨拶をする。
ああ、これは夢なんだな、
猫が正装して喋り、背丈が人間の男ほどある。
さっきはありがとう。
貴方のおかげで、、、。
いえいえ、
僕はこうして、今まで、その、君は気づかないが、多分、結構な回数、色々な折に、前の時も、貴女をscoopして来たんだよ。
前の時とはわたしが前に生きていたステージのこと??
そうだね。
このステージに来る前にイレイザーかけられてるけどね。
そうね、だけどわたしは貴男を誰だか知っている。
何があったか知らなくても貴男を
知ってる。
そう。
お互いを識ってたよね。
ところでこれは夢ですか?
うーん、夢は覚める前に気づいてしまったら、僕の存在も偶然の作り物になるもんね。
だけど僕はホンモノだよ。
それは、わかる。
貴男はオレオだし。
そうね、そうだった事もある。
君の弟だった事もあるしね。
やはり、、、そうだったのか。
わたしが5才の時に、母は入院し、
小さな小さな男の子を生んだ。
しかしそれは早すぎる出生で、
わたしが楽しみにしていた出逢いは
そこにはなかった。
その子は1400グラムの重さでその存在はあまりに儚く、遠い昔の時代には幼い姉が逢いに行くことも許されなかった。
ある日、
ちいさい貴男に初めて逢いに行くことが許された日、
透明な四角い部屋の中で君はわたしを
じっと見てから、微笑んだように見えた。
けれど次にわたしが貴男を見たのは、
病院の地下の
記憶の全てがねずみ色に塗り込められた
ひんやりとした蝋燭のほのほが揺れる場所だった。
わたしは、君をこの腕に載せたかった。
いつか庭にあるブランコに
二人乗りしたかった。
アイスクリームを二人で取りっこして
ほおばりたかった。
諦めがつかなかった。
いつまでも諦めがつかなかった。
それなのに、
子供が生めなくなった母に気づかいをして、
5才のわたしは君を瞳の裏に封じ込めた。
そして二度と語ることはなかった。
そうさ、だから僕は神様に人生を7年7か月前借りして、君の家にやってきた。
とある7月7日にね。
人生を前借り!?!
そう。神様に次のステージで生きる分を7年7か月前借りして、黒猫に化身して君を見に行ったのさ。今、どんな暮らししてる? しあわせに暮らしてんのかな、ってね。
せっかく来たのに、貴男は5年5か月で空へ行ったのよ、計算が違ってるわ。
2か月は、僕が生まれてから君の家に行くまでに使ったし、あとの2年はこうして、夢で逢いに来たりしてるのさ。
いきなりあの世へ行っちゃ、お互い未練があるからさ。
そうー。もうかれこれ、5か月分くらいは使ってしまっているよ。
なんで??
そんなに。?
夜、皆が寝静まってるとき、ベッドの隣に座ってたりさ。
君の夢で悪いやつを追い払ったりさ。
こうやってちゃんと話しが出来るまで結構使い込んだんだよ、前借りの残り分をさ。
そういえばオレオのけはいがしたときもあったわ。
こうしている間にも
時の砂が削り取られてるんだわね。
ねぇ、貴男がオ・レオナルド・ビスコット卿だった時をわたしはなぜ知っているの?
え?それは君が、いつかまた、ホームに帰って来たら、想い出すのさ。
今、僕が話しちゃならないんだ。
ね、わたしたちは又逢える?
前借り分の時間が終わっても。
多分ね、
ずううっとね。
この次逢うステージでは、僕はもっと君と一緒に居られる。
だからその時間を少し前出ししたんだよね。
恋人でも夫婦でも親子でもないけどね。
それはかえってすごい縁(えにし)なのね。
何回も何回も別れて、
又逢える。
そうそう、オレオがぬけがらになったあと、君はオレオの牙を持ってただろ??
抜けた右の剣齒ね。
あれ、失くなってしまったのよ。
ある朝宝石箱の中から消えてた。
あれはね、
君が宝石箱開けてた日に
パストル・イーロン氏が僕の匂いがするって、ベッドの下に持っていって大事にしてるのさ。
僕がオレオだった時の兄ちゃんだから
急に僕が居なくなって寂しかったんだろうね。
ノルディエ・ルシア嬢にも、世話になったと、伝えておくれ。ホントに可愛がってくれた白猫姉さんだったから。
ビッケ、、、。
ビッケのあのくしゃみだよね。
オレオだった時の、僕のニックネームか......。
懐かしいな。
何故かビスコット卿は急に腕時計を気にする。
じゃ、今回はそろそろ行くよ。
なんせ、車の前に飛び出すのは、タイミングが大事だし、肝を冷やすんだよ。
たとえもう既に死んでても、ね。
良かったわ、貴男を轢かなくて。
あの人も轢かなくて。
彼は轢かないよ。
夢でも人を轢かないように僕が行ったんだからさ。
タイミング狂って僕が
黒豹の敷物みたいになってる姿も見たくなかっただろうし、良かったね。
本当に行っちゃうのね。
あの、、、もし、
前借り分がなくなったらどうするの?
その頃はもうさ、
君が次のステージにやってくる
約束の時刻さ。
あ、これをあげとくね、
お守りだよ。
ビスコット卿はいきなり左の剣齒を抜いて高く差し出した。
溶鉱炉の炎に照らされて
それはオレンジに輝き、
半透明の宝石のように見えていた。
わたしの手にしっかり握らせるが、
待って!!
でも、これは夢なんでしょ!?
と、弟で、オレオで、ビスコット男爵である彼に叫ぼうとした!!
ふっとため息をついてから、
その存在は街灯の下から姿を消す。
風が通り
オレオを抱きしめた時の、
懐かしいシナモン枝の香りがした。
いけない!まだベッド、
こんな時間だ!
そうっと、てのひらを開いてみるが、
あのはっきりとした記憶の、
オレンジの犬歯はなかった。
夢だもんね。
ランチの支度を始めた頃、
随分ご無沙汰しちゃったけど、と、
missチサコから予約の電話が入った。
電話を取る前に
わたしは、なぜミスチサコだと思ったのだろう。
かれこれ半年も店に来ていない。
あわただしい彼女なのだ。
またすぐに来るね、と言っておいて、小さな約束も忘れているようだった。
店はいきなり混んできて、
途中でやってきたミスチサコをほっぽらかしにする。
待っててね、最後まで居てよ、
忙しいの?
これからどこか行くの?
場所変えてお茶飲んでもいいよ。
わたしは、他のテーブルへランチを運びながら一方的にミスチサコにはなしかけている。
ニヤニヤする彼女は、
落ち着きなさいとわたしに言い、出汁をすすっている。
お引きさせて頂いてよろしいでしょうか?
他の人々のプレートをいつもより早めにさらって、デザートを出した。
気にも留めていない、
ミスチサコ。
占い協会の冊子を見ているのか、黒いテーブルだけを見ている、
わたしは視界から追い出されている。
お店が空になったあと、ミスチサコのテーブルへ行くと彼女はテーブルに色々な色の勾玉(まがたま)を並べていた。
あ、そうそう、前に貴女を占った時、貴女のソウルカラーがオレンジだと言ったよね。それで、オレンジの勾玉を作って来てあげると言ったのに、
すっかり遅くなっちゃって、、、
だからね、今日持ってきたのに、オレンジだけ、どっか行っちゃったのよ、ちょっと待ってね。
あれー、おかしいな、
どうしたんだろ、
何握ってるの?
それにしてもどこ行ったんだろ、
ケースの中にバラで入れてたんだわよね。
ね、何持ってるの??
テーブルの向かいに座っているわたしに、笑いながらミスチサコは訊いている。
気になってるんだけど。
え?
見せて。
オレンジのマガタマ???
え?
拡げたわたしのてのひらの中にそれはあった。
いつから?いつから持ってたの??
チサコは失笑う。
わたしは勾玉をじっと見ていた、、
ゆうべから。。。
うそつき!!
チサコはゲラゲラ笑った。
あー、良かった。貴女のカラーのお守り。
厄除けだからさ、早く渡したかったんだけど、忙しくてごめんね。
さっきミスチサコがテーブルの下へ落としたものを私が拾ったのだろうか。
なんせ、ランチの最後が忙しすぎて、
覚えていなかった。
ミスチサコは、別のデザートをさらに注文して多めに払い、
お釣りはいらない、とご機嫌で手を振った。
またね!
わたしの手のひらには
半透明の勾玉の貴石があった。
オレンジの奇跡。
ビスコット卿、、、!
また逢えるよね??
お守りをありがとう。
窓を閉める。
青空だというのに、
今日はもの悲しすぎていた。
La fine.
いつ終わんの、これ!
消しても消しても、消しても。
何の悪意か!
こういうこと色々あるから、アメブロ遠ざかってました。
あーあ、せっかくお題のブログでも投稿しようとしたのに、このていたらくだー!
ところで私が一日中夢中になれるものは、
ワンピースづくり。✌️✌️✌️🌈🌈🌈

s://blogtag.ameba.jp/news/%E4%B8%80%E6%97%A5%E4%B8%AD%E6%B2%A1%E9%A0%AD%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8" rel="noopener noreferrer" target="_blank">









