オーストラリアはスポーツが盛んだけれど、私はその中でAFLが好きだ。
オーストラリアでしかプレイされないスポーツとして、これだけの人気を保つにはそれなりの努力が必要だと夫は言う。
私はワーキングホリデーで来た1年目に初めて試合を観て、「これは面白い」と直感的に思った。ルールは比較的シンプルで、サッカーよりアグレッシブ。試合展開もテンポよく進むので、観ていて飽きない。
そして、オーストラリアでは「夏はテニス」という文化があることも、ここで学んだ。
そのほかにもバスケットボール、サッカー(強豪国というほどではないのでメジャー感は薄い)、ラグビー、ネットボールなど、それぞれにシーズンとファンがいる。
西オーストラリアではAFLが圧倒的に人気で、ラグビーは東海岸ほど盛り上がらない。シドニーに住んでいた頃は、スポーツの話題といえばほぼラグビーで、「AFLって何?」と言われることもあった。
そんなスポーツ大国オーストラリアで、全国区の人気を誇りながら、私が20年以上まったく面白さを理解できなかったものがある。
それが、クリケットだ。
世界的に見て爆発的な人気スポーツとは言い切れないけれど、ファンの数はとにかく多い。
オーストラリア、イギリス、インドを中心に、熱狂的な支持層が存在する。
クリケットの起源は16世紀ごろのイングランド。羊飼いの遊びが元になったとも言われ、そこから貴族階級に広まり、イギリス帝国の拡大とともに植民地へ伝わった。オーストラリアでも19世紀にはすでに定着し、今では「夏の風物詩」のような存在だ。
ただし、ルールを知らないと本当に意味がわからない。止まっている時間が長いし、何が起きているのかもよくわからない。正直、長い間「なぜこれを何時間も観ていられるのか」と思っていた。
夏なのに場合によってはニットを着用。
モーニングティーやお昼休憩がある。
雨が降ったら即撤収。こんなにも雨に弱いスポーツは初めて知った。
それも夫が言うには「イギリスの上流階級のスポーツだからね、ゆるりと華麗にやるのだよ」と言っていた。
そんな私が、今年になってようやくルールを少し理解した。
アウトの種類、点の入り方。それが分かり始めると、試合の見え方が変わってきた。
特に印象が変わったのが、5日間続くテストマッチ形式のクリケット。(ことしは2日間で終わったゲームが2回あったけど)
以前なら「5日間も同じ試合を?」と思っていたのに、今はダラダラと楽しめる。
集中して観るというより、生活のBGMのように流しておくスポーツ、という感じだ。
派手さはないけれど、わかると静かに面白い。
そして、オーストラリアの夏にこれが根付いている理由も、少しわかった気がしている。
二十数年かかってようやくたどり着いた境地だけれど、「わからないまま終わらなくてよかった」と、今は思っている。
ちなみに、もう十年近く前の話。
親戚の一人が結婚することになり、そのお祝いとして「彼がずっと夢見ていたクリケットをMCGで観る」という企画が持ち上がった。
友人も家族も総出で、舞台はメルボルン・クリケット・グラウンド。クリケット好きにとっては聖地である。
当日、本人は朝から有頂天。
試合前から飲み、試合中も飲み、終わってからも飲む。とにかく飲む。
そして翌日、パースへ戻る予定だった。
……が、恐ろしいほどの二日酔い。
本人曰く「これはもう帰れないかもしれない」と一瞬覚悟したらしい。
ちなみに彼は医療関係者。なのに。
さらに悪いことに(いや良いのか)、同行していた友人の一人が医師だった。
その医師が空港で「彼は大丈夫です」と言い切り、なんとそのまま5時間ほどのフライトでパースへ戻ることに成功。
もちろん、大丈夫なわけがない。
高度の影響もあり、機内ではさらに酔いが悪化。結果、友人医師が客室乗務員に頼んで酸素を用意させ、それを吸引しながら帰ってきたという。
祝福と情熱とアルコールが暴走した結果である。
クリケット愛が深いのは結構だけれど、これはもう愛というより、ただのあほの極みだと思っている。