父が肝臓癌になりました。

経過が良ければ

2週間ほどで退院できると言われ

日々スポーツクラブで筋トレして

鍛えて元気な父なので

父も母も私も2週間で退院する気満々でした。


父が若い頃から酒好きで

健康診断でも肝機能だけは引っかかってたし

それでも父は『悪い所は呑めば治る』って


そんな父の肝臓が健康な肝臓なはずはなく

他は元気でも肝臓だけはボロボロだって事

皆 忘れていたんですよね。


少しづつ良くなってはいるものの

2週間どころか もうすぐ2ヶ月経ちます。


どうしても華恵さんに文句を言いたい私に

夫は『向こうはもう償ってる』といい

華恵さんが癌になって家族と向き合いたいと

別れたことを初めて聞いたのは

今年の3月でした。

華恵さんは夫に

『バチが当たっちゃったかなぁ』って

言ったとか。


それを聞いたときも夫に言いましたよ。

『癌はバチじゃないし 

 償いじゃない』

あの時の事を あの時気持ちを

何度も強く思い出した2ヶ月でした。


だって母から 父が癌かもしれないから

一緒に検査結果を聞きに行ってほしいと

言われたのは

『癌は 病気はバチじゃない❗

 闘病生活が償いのわけがない❗』と

車の中で泣きながら夫に言った日から

まだ2ヶ月位しか経っていなかったから


父が癌かもしれないって聞いた時も

『ほら 病気は誰でもなるじゃない

 もし夫が癌だったら それはなんのバチ?』

って内心では夫に聞いてみたいって

反発心が生まれていたし


あんなに鍛えてて 爺ちゃんだけど

笑えるくらい筋肉自慢で

部活やら自主練やらで鍛えてて若い息子にも

「爺ちゃんの筋肉もすごいだろう!」と

張り合ってたのに

今は骨と皮しかない 筋肉も消えてしまった。


闘病生活 食欲もなく 

父が 日々痩せていくのを見ながら思ってた。


3年前 桜子ちゃんの卒業式の時

私が見た華恵さんは 今思えば手術して

数ヶ月しか経ってない頃だったはず

でも やつれた とは感じなかったから。


ねぇ 華恵さんの癌が償いなら

骨と皮どころか 骨だけになってないと

納得いかない。

華恵さんの闘病生活が償いなら

父さんよりも もっともっと苦しんでなきゃ

納得いかない。


面会は平日で時間も決まってるから

夫は一度も今の父を見ていないけど

私は ずっと 夫にそう言いたかった。


『向こうは もう償ってる』

そう言い切った夫に

癌というバチが当たって償ってるから

5年再発しないことを見守って

私が華恵さんに文句を言いに行って

気持ちを乱したりすることなく

穏やかに生活をさせてあげたいとか…


そんな事を考えていただろう夫に

今更ながら腹もたった。


この前 母に一緒にお見舞いに行こうと言われ

夫に頼んで早く仕事をやめて

父に会いに言った時


近所の人が入院してもう退院したって

世間話から 父が弱音を吐いた。


「いいなぁ この前入院して もう出たのか

 なんでオレは まだこんななのかなぁ…

 何か悪い事したかなぁ。

 ひとに迷惑かけないように

 ひとの役に立つようにしてきたつもりなのに

 知らないうちに何か悪い事してたのかなぁ

 こんなに辛いなら癌なんか見つからないで

 手遅れになるまで大好きな酒呑んで

 楽しく笑って過ごして

 死んでしまえば良かった」

って。

それでも妹は手術できるならすればいいって

できないなら 本人が望むなら治療しない

てもある…って言ってたのに 手術しても 

父がこんな弱音吐くほど辛いなら他の治療は

高齢者には もっと辛いって事なのかなぁ…

声もかすれて 息も苦しく絶え絶えで

ゆっくり声を詰まらせながら そう言う父に

「悪いことなんか何にもしてない

 お父さんはボランティアもして

 むしろ良いことばっかり沢山してきたよ。

 大丈夫 もうすぐ良くなるよ」

って母が泣いてた。

それを見て父も涙目になって泣きそうだった。


私も泣きそうだったから 笑いながら

「やめてよ。

 いい事してても病気になるし

 なんか悪い事したかって言ったら

 日々呑み過ぎてたからでしょう。

 泣かないでよ〜

 笑う門には福来たるだよ~

 もうちょっとで良くなるよ 大丈夫だから」

一生懸命言ったんだけど しんみりでした。


その時 さらに強く思ったんですよ。


華恵さんの癌がバチが当たったなら

父は何のバチですか?

華恵さんの闘病生活が償いなら

父は どんな許されない罪をおかしたから

こんなに辛い思いをして償うんですか?

そりゃあ人間 間違うこともあるし

もしかしたら知らないうちに誰かを

傷つけたりすることもあるけど

華恵さんみたいに他人の心を殺して

死んでも恨み続けてやるってくらい

恨まれるような事は父はしてないと思うよ。


夫の「向こうはもう償ってる」と

華恵さんの「バチが当たっちゃつたかなぁ」が

頭の中でグチャグチャにもやもやなって

ねぇ何のバチ?

何の償い?ねえねえねえねえ!

って夫と華恵さんに詰め寄りたい気分だった。


だからその日は家に帰ってから

夫と子供達に その話をしました。

『悪い事したから癌になるわけじゃないし

 病気で苦しむことで償ってるわけじゃない

 なのに なんでこんなに長く

 苦しまなきゃならないんだろうね。

 神様とか仏様とかにも文句言いたいわ』

って。

半分 いや全部 なにげに夫にイヤミです。

だって言わずにはいられなかったんだもの…

まあ 伝わってるかどうかは

わかりませんけど。


父には絶対に言えないですけど

父が早く元気になってくれないと

華恵さんに対するモヤモヤが増すし

癌の手術をして再発の不安をもつ彼女を

『償ってる』と思ってた夫への不満も

大きくなっちゃいます。


夫がどんなつもりだったかは知らないけど

華恵さんを そっとしておいてあげたいとか

私に文句をいわせないようにしていた事が

私とちゃんと やり直そうとしているようで

しっかり華恵さんを守り続けていた気がして

腹が立つから…。



シャクヤクの写真

父が入院前に 母と携帯のLINEで

写真を送る練習をして

『庭のシャクヤクが咲きました』

って私に送ってきた写真です。

もうシャクヤクの花は終わりましたが

なにか庭の花が咲くと母は写真を撮って

父に送っています。

父はこの前 病院の窓から見える夕日を撮って

母に送って来たそうです。

あれ?父さん そんなロマンチックな人だった?

父がガラ携からスマホにして1年くらいかな?

母は父がLINEができるようになってて良かった

と しみじみ言ってます。