~ザク、グフ、ドム、ゲルググ。開発しすぎた軍隊の経営戦略~

おはこんにちは。どうも僕です。

ガンダムを観ていて、以前から不思議に思っていたことがあります。

ジオン軍のモビルスーツ開発です。

ザクが登場したと思えば、グフが現れる。

続いてドム。

さらにゲルググ。

水中ではゴッグ、ズゴック、アッガイ。

宇宙ではリック・ドムや高機動型ザク。

そして、巨大なモビルアーマーまで登場する。

いや、ちょっと待ってください。

ジオン軍、新型機を作りすぎじゃないですか?

一年戦争は、その名前のとおり、およそ一年間の戦争です。

その短い期間に、これだけ多くの機体が登場する。

しかも、ジオン公国は地球連邦に比べて人口や国力で不利な立場にありました。

そんな国が、なぜ次々と新型モビルスーツを開発できたのでしょうか。

そして、もっと気になることがあります。

もしジオン軍が、ザクだけを大量生産していたら、戦争の結果は変わったのか?

今日は、そんな話です。


■ザクという、あまりにも優秀な商品

まず、ザクⅡについて考えてみます。

ザクⅡは、一年戦争初期のジオン軍を代表する主力モビルスーツです。

宇宙空間で活動できる。

武器を交換できる。

地上でも運用できる。

用途に応じた改修も可能。

さらに、量産を前提とした設計です。

これ、兵器として考えると相当に優秀です。

もちろん、万能ではありません。

大気圏内での機動性や重力下での運用など、課題もありました。

それでも、ザクという共通のプラットフォームがあれば、整備や補給の仕組みを統一しやすくなります。

部品を共通化する。

整備兵の教育を統一する。

パイロットの機種転換を減らす。

生産設備を使い続ける。

企業経営で考えれば、非常に合理的です。

トヨタが毎月まったく別の構造の自動車を発売し、そのたびに工場の設備を入れ替えていたら大変ですよね。

軍隊も同じです。

強い兵器を作ることと、強い軍隊を作ることは、必ずしも同じではありません。

ザクは優秀な兵器だった。そして、優秀な量産商品でもあった。

では、なぜジオン軍はザクだけで戦わなかったのでしょうか。


■グフは、ザクでは駄目だったのか?

地球への侵攻が始まると、ジオン軍は地上戦に適したモビルスーツを必要としました。

そこで登場するのが、グフです。

ザクよりも地上での格闘戦を重視した機体。

ヒート・ロッド。

フィンガー・バルカン。

そして、特徴的な青い装甲。

ランバ・ラルの活躍もあって、非常に印象的なモビルスーツです。

ただ、ここで考えてしまいます。

ザクを地上戦向けに改修するだけでは駄目だったのか?

実際、ザクには陸戦型など、さまざまな派生機が存在します。

つまり、既存機を改良する選択肢はあったわけです。

それでも、新しい機体が必要だった。

理由の一つとして考えられるのは、地球という環境の厳しさです。

宇宙と地上では、求められる性能が違います。

重力。

地形。

気候。

移動方法。

ザクの設計を改修するだけでは、限界があったのかもしれません。

グフの開発には、一定の合理性があります。

ただし、問題はここからです。

グフが登場したと思ったら、今度はドムが出てくるんですね。


■ドムの登場で、開発思想が変わった

ドムは、グフとは大きく異なる方向性を持ったモビルスーツです。

特徴は、ホバーによる高速移動。

地上を滑るように移動することで、重力下でも高い機動力を発揮します。

これは、グフとは異なる解決方法です。

グフが地上での格闘戦を重視した機体なら、ドムは地上での移動能力を重視した機体。

ここには、兵器開発としての進歩が見えます。

ただ、企業経営という視点では、少し気になることがあります。

グフの開発と生産に投資した直後に、別の設計思想を持つドムが登場する。

もちろん、実際の開発計画は並行して進んでいた部分もあるでしょう。

しかし、軍全体で考えると、機種が増えるほど補給や整備は複雑になります。

ザクの部品。

グフの部品。

ドムの部品。

それぞれの専用装備。

整備方法も違えば、運用方法も違う。

パイロットだって、新しい機体に慣れなければなりません。

強いモビルスーツが増えるほど、軍隊の運用は難しくなる。

ここが、兵器開発の面白いところです。


■水中用モビルスーツという、もう一つの問題

さらに、ジオン軍には水陸両用モビルスーツがあります。

ゴッグ。

ズゴック。

アッガイ。

ゾック。

地球の海で戦うために、専用の機体が開発されました。

これは、ある意味では理解できます。

宇宙用のザクを、そのまま海に沈めても十分な性能は期待できません。

水圧への対応。

水中推進。

機体の密閉性。

武装の選択。

水中では、宇宙とも陸上とも異なる設計が必要です。

しかし、ここでも疑問が浮かびます。

水中用だけで、そんなに種類が必要だったのか?

それぞれ役割や設計思想は異なります。

とはいえ、限られた国力で戦うジオン軍が、これだけ多くの専用機を開発する必要があったのか。

例えば、一つの優秀な水陸両用モビルスーツを選び、そこに生産資源を集中させる。

そうした選択肢もあったはずです。

新型機が増えるほど、開発費も生産設備も必要になります。

そして、戦争が長引くほど、補給や修理の負担が大きくなります。

ガンプラとしては種類が多い方が楽しい。

でも、軍の補給担当者からすれば、頭が痛い話でしょう。

「また新型ですか?」

そんな声が聞こえてきそうです(笑)。


■ジオン軍の開発は、企業同士の競争でもあった

ここで、ジオン軍のモビルスーツ開発を少し違う角度から見てみます。

ジオンの兵器開発には、ジオニック社やツィマッド社、MIP社など、複数の企業が関わっています。

ザクを開発したジオニック社。

ドムを開発したツィマッド社。

それぞれが独自の技術を持ち、軍への採用を目指していました。

つまり、ジオン軍の兵器開発は、一つの組織がすべてを統一して進めていたわけではありません。

企業間の競争があったわけです。

競争そのものは、悪いことではありません。

新しい技術が生まれる。

性能が向上する。

異なる設計思想が試される。

こうしたメリットがあります。

ただし、戦争中となれば話は別です。

各企業が自社の技術や機体の採用を目指すほど、軍全体としての統一性が失われる可能性があります。

企業にとっては、自社のモビルスーツが採用されることが重要です。

しかし、軍隊にとって重要なのは、戦争に勝つことです。

企業にとっての最適解と、軍隊にとっての最適解は、必ずしも一致しない。

これは、現実の企業経営でもよくある話です。

各部署がそれぞれ成果を上げようとする。

その結果、会社全体としては効率が悪くなる。

ジオン軍にも、似たような問題があったのかもしれません。


■ゲルググという、遅れてきた優等生

そして、一年戦争末期に登場するのがゲルググです。

ビーム・ライフルを標準装備した、高性能な量産型モビルスーツ。

機体性能の面でも、連邦軍のガンダムに対抗し得る機体として描かれています。

ジオン軍にとって、非常に重要な存在です。

ただし、問題があります。

登場が遅かった。

戦争末期には、ジオン軍の熟練パイロットが多数失われていました。

いくら優秀なモビルスーツがあっても、それを十分に扱えるパイロットが不足していたわけです。

ここで、兵器開発の厳しい現実が見えてきます。

高性能な兵器が完成したとき、使いこなせる人間が残っているとは限らない。

これは、開発期間と戦争の進行が一致しなかったことを示しています。

新型機の開発には時間が必要です。

試作。

試験。

改修。

量産。

配備。

訓練。

これらを経て、ようやく戦力になります。

つまり、完成した瞬間に戦力が増えるわけではありません。

ゲルググは、機体としては優秀だった。

しかし、戦争という時間との競争には、間に合わなかった部分があったのでしょう。


■もし、ザクだけを大量生産していたら?

さて、最初の疑問に戻ります。

もしジオン軍が、ザクだけを大量生産していたら。

戦争の結果は変わったのでしょうか。

まず、考えられるメリットがあります。

生産設備を統一できる。

部品の共通化が進む。

整備が容易になる。

パイロットの訓練を標準化できる。

機体の調達計画も立てやすくなる。

軍隊全体の効率は、改善した可能性があります。

しかし、デメリットもあります。

ザクの性能には限界があります。

連邦軍がガンダムやジムを投入し、ビーム兵器を普及させれば、ザクだけでは厳しい戦いになったでしょう。

地上や水中など、特殊な環境への対応にも制約が生まれます。

つまり、ザクだけを作り続けるのが正解だったとも言い切れません。

では、どうすればよかったのか。

僕は、こう考えます。

必要だったのは、新型機を作らないことではなく、作る機体を絞ることだったのではないか。

主力機はザクを改良しながら運用する。

地上用には、ドムのような機動力に優れた機体を採用する。

水中用は、必要な役割に合わせて機種を絞る。

そして、次世代の主力機としてゲルググを早期に量産する。

もちろん、これは結果を知っている僕らだから言えることです。

当時のジオン軍には、連邦軍がどんな兵器を投入してくるのか、戦争がいつ終わるのか、完全には分かりません。

不確実な状況で、複数の開発計画を進めることにも意味はあったはずです。

ただ、それでも、開発資源をどこに集中させるかという判断は重要だったと思います。


■新型機が多いことは、強さの証明ではない

ガンダムを観ていると、新型モビルスーツが登場するたびにワクワクします。

ザクとは違うグフ。

グフとは違うドム。

そして、ゲルググ。

それぞれに個性があり、魅力があります。

でも、軍事的な視点では、少し違う評価になるかもしれません。

兵器の性能が高いこと。

種類が豊富であること。

新しい技術が投入されること。

それらは、必ずしも軍隊全体の強さを意味しません。

戦争では、兵器を作るだけでは足りません。

必要な場所へ届ける。

整備する。

燃料や弾薬を補給する。

パイロットを育てる。

そして、継続して運用する。

これらが揃って、初めて戦力になります。

最強のモビルスーツを一機作るより、十分に強いモビルスーツを百機運用する方が、戦争では重要な場面もある。

ジオン軍の新型機開発を見ていると、そんなことを考えてしまいます。


■しめ

ジオン軍は、なぜあんなに新型モビルスーツを作ったのか。

地球侵攻への対応。

連邦軍の新兵器への対抗。

企業間の技術競争。

新しい戦術の模索。

さまざまな理由があったのでしょう。

そして、機種の多さがジオン軍の敗北を直接決めた、と断言することはできません。

国力の差。

戦略の失敗。

兵力の消耗。

政治的な問題。

戦争の結果には、数多くの要因が絡んでいます。

ただ、僕には一つ気になることがあります。

ジオン軍は、新しいモビルスーツを開発することに成功しすぎたのではないか。

技術者は、より優れた機体を作ろうとする。

企業は、自社の技術を採用してもらおうとする。

現場は、より強い兵器を求める。

それぞれの判断には、合理性があります。

でも、それらを全部積み重ねた結果が、軍全体にとって最善になるとは限らない。

これは、戦争だけでなく、会社や組織にも通じる話かもしれません。

……。

とはいえ、ガンプラ好きとしては複雑です。

もしジオン軍が、徹底した合理化によってザクだけを生産していたら。

グフも、ドムも、ズゴックも登場しなかったかもしれない。

それは、それで困ります。

ジオン軍の開発戦略は反省点が多い。でも、バンダイの立場からすれば大成功だったのかもしれません。

今日はここまで。それでは、また別のお話で。