~リアルにしたいのに、実物にはない線を強調していない?~

おはこんにちは。どうも僕です。

ガンプラを作っていると、必ずと言っていいほど出てくる工作があります。

スミ入れ。

装甲の溝に塗料を流し込んだり、専用のペンで線を描いたりする、あの作業です。

これが、なかなか面白い。

素組みのガンプラ。

もちろん、そのままでもカッコいい。

でも、スミ入れをすると、急に引き締まって見える。

装甲の境界がはっきりする。

細かなディテールが浮かび上がる。

「おお、リアルになった」

そう思うわけです。

でも、ここで一つ疑問があります。

本物のモビルスーツって、そんなに黒い線だらけなんでしょうか?

今日は、スミ入れという当たり前の工作を、少し斜めから考えてみます。


■そもそも、スミ入れは何をしているのか

スミ入れとは、パーツの溝や段差に暗い色を入れ、立体感を強調する技法です。

ガンプラだけでなく、戦車や航空機などのスケールモデルでも使われています。

例えば、白い装甲。

何もしなければ、光の当たり方によっては細かな分割線が見えにくい。

そこへ、グレーや黒を入れる。

すると、装甲の境界がはっきり見える。

機体の情報量が増えたように感じるんですね。

ただし、実際にパーツが増えたわけではありません。

装甲が厚くなったわけでもない。

やっているのは、もともと存在していた溝を目立たせること。

言ってしまえば、目の錯覚を利用しているわけです。


■18メートルのガンダムを見上げたら、どう見える?

ここで、少し想像してみます。

全高約18メートルのガンダム。

もし、目の前に立っていたら。

見上げることになります。

相当、大きい。

当然、装甲には分割線があるでしょう。

整備用のパネルもあるかもしれません。

でも、それらが全部、黒い線として見えるのでしょうか。

例えば、白い自動車。

ドアとボディの境界には隙間があります。

ただ、遠くから見ると、すべての継ぎ目が均一な黒い線に見えるわけではありません。

光の当たり方。

隙間の深さ。

周囲の影。

表面の汚れ。

それらによって、見え方は変わります。

モビルスーツも同じでしょう。

つまり、模型のすべての溝を均一に黒くすることが、必ずしも実物らしいとは限らない。

ここが、ちょっと面白いところです。


■なのに、スミ入れするとリアルに見える

では、なぜ僕らはスミ入れしたガンプラを見て、リアルだと感じるのでしょうか。

僕は、理由の一つが「大きさの錯覚」にあると思います。

ガンプラは小さい。

例えば、1/144スケール。

18メートルのモビルスーツなら、模型の高さは約12.5センチです。

この小さな模型を、僕らは巨大な兵器として見たい。

でも、模型は実物よりずっと小さいので、細かな陰影が見えにくくなります。

そこで、スミ入れ。

本来なら光と影で生まれる立体感を、塗料で少し強調する。

すると、小さな模型でも装甲の分割が認識しやすくなる。

つまり、スミ入れは実物をそのまま再現するというより、小さな模型を大きく見せるための演出なのかもしれません。

そう考えると、黒い線にも意味が出てきます。


■アニメのガンダムにも、線が描かれている

もう一つ、忘れてはいけないことがあります。

ガンダムは、もともとアニメのキャラクターです。

アニメでは、装甲の境界や機体の形を線で表現します。

白い装甲と白い装甲が重なっている。

その境界に線を描く。

そうしなければ、画面の中で形が分かりにくくなることがあります。

つまり、僕らは子供の頃から、線によって立体感が表現されたガンダムを見てきたわけです。

そう考えると、ガンプラのスミ入れには、もう一つの役割があります。

実在兵器らしく見せるだけでなく、アニメのガンダムらしく見せること。

これ、意外と大事なんじゃないでしょうか。

リアルな機械を再現したいのか。

アニメで見た姿を再現したいのか。

この二つは、似ているようで少し違います。


■黒ければ黒いほどいいのか

ここで、また疑問が出てきます。

スミ入れは、濃ければ濃いほどいいのでしょうか。

僕は、そうは思いません。

例えば、白い装甲に真っ黒なスミ入れ。

線がはっきりして、メリハリが出ます。

一方、グレーを使うと、少し落ち着いた印象になる。

青い装甲なら、濃い青やグレー。

赤い装甲なら、茶色系。

こうした色を使うと、自然な陰影に見える場合があります。

もちろん、これは好みです。

アニメのようなメリハリを出したければ、黒を使うのもいい。

実在兵器のような落ち着いた雰囲気にしたければ、色を抑えるのもいい。

つまり、スミ入れには正解が一つしかないわけではありません。

何をリアルだと思うかによって、選ぶ色も変わる。

ここが、ガンプラの面白さだと思います。


■スミ入れをしない方がカッコいい機体もある?

さて、少しひねくれた話をします。

スミ入れをしない方が、カッコいい機体もあるんじゃないでしょうか。

例えば、曲面の多いモビルスーツ。

滑らかな装甲。

シンプルな外観。

そこへ細かな線を強調しすぎると、せっかくの美しい曲面が分断されて見えることがあります。

逆に、直線的な装甲を持つ機体なら、スミ入れによってシャープさが際立つこともある。

つまり、スミ入れの効果は、機体のデザインによって違う。

そして、作る人がどんな姿を目指しているかによっても違います。

全部の線を強調する必要はない。

目立たせたい部分だけに入れる。

そんな選択も、十分にありだと思います。


■そもそも、線を描いているだけなのに技術がいる

ここで、実際の作業の話。

スミ入れ。

簡単そうに見えます。

溝に色を入れるだけ。

ところが、やってみると意外と難しい。

線がはみ出す。

拭き取りすぎる。

思ったより濃くなる。

細い溝に塗料が流れない。

そして、使う塗料やパーツの材質によっては、プラスチックを傷める危険もあります。

特に、エナメル系のスミ入れ塗料や溶剤は、パーツの状態や使い方によって亀裂の原因になることがあります。

組み立て済みのパーツの隙間に塗料が入り込むと、内部に溶剤が残りやすい場合もあるので注意が必要です。

だから、ただ線を描くだけとはいえ、意外と奥が深い。

そして、失敗したときほど思います。

「最初から何もしなければよかったかな……」

ガンプラあるあるですね(笑)。


■スミ入れは、リアルを作るのか、リアルに見せるのか

ここまで考えて、今回の本題に戻ります。

スミ入れは、リアルなモビルスーツを再現するための工作なのでしょうか。

それとも、リアルに見えるガンプラを作るための工作なのでしょうか。

似ているようで、少し違います。

例えば、映画のセット。

実際の建物よりも、傷や汚れを強調することがあります。

照明の中で、質感が伝わりやすくなるからです。

模型も、それに近いところがあると思います。

小さなものを大きく見せる。

プラスチックを金属のように見せる。

存在しない兵器を、そこにあるように感じさせる。

そのために、現実より少し強調した表現を使う。

つまり、リアルに見せるためには、必ずしも現実どおりに作る必要はない。

これが、スミ入れの面白いところなんじゃないでしょうか。


■僕は、スミ入れをする派です

ここまで、いろいろと疑問を投げかけてきました。

では、僕自身はどうなのか。

スミ入れ、します。

……。

するんかい(笑)。

いや、やっぱりカッコいいんですよ。

装甲の境界がはっきりする。

細かなディテールが浮かび上がる。

完成したときの満足感も違います。

ただ、全部を真っ黒にする必要はないと思っています。

機体の色。

装甲の形。

全体の雰囲気。

それらを見ながら、少しずつ加えていく。

そのくらいが、僕にはちょうどいい。

もちろん、スミ入れをしない素組みも好きです。

最近のガンプラは、成形色やパーツ分割だけでも十分に見栄えがいいですからね。


■しめ

ガンプラのスミ入れ。

ただの線。

でも、その一本の線で、機体の印象が変わります。

立体感が増す。

大きく見える。

兵器らしくなる。

アニメらしくなる。

不思議なものです。

そして、今回考えてみて思いました。

スミ入れは、現実をそのまま再現する工作ではなく、僕らが思い描くリアルを表現する工作なのかもしれない。

だから、黒でもいい。

グレーでもいい。

茶色でもいい。

何もしなくてもいい。

自分がカッコいいと思う姿に仕上げれば、それでいい。

……。

もっとも、僕の場合。

スミ入れを始めると、だんだん楽しくなってきます。

ここも入れよう。

あそこも入れよう。

もう少し濃くしよう。

そして、完成したガンプラを眺めて思うんです。

「あれ? ちょっと線、多くない?」

リアルを追求したはずが、気づけば自分で描いた線に囲まれている。

今日はここまで。それでは、また別のお話で。