~精密センサーの横で60mm砲を撃つという設計~
おはこんにちは。どうも僕です。
前回、
モビルスーツに、
「頭って、本当に必要なの?」
という記事を書きました。
メインカメラ。
センサー。
通信装置。
アンテナ。
MSの頭部って、
思っていた以上に、
精密機器の塊です。
そこで、
改めてガンダムの頭を見る。
ツインアイ。
V字アンテナ。
各種センサー。
そして、
こめかみ付近。
バルカン砲。
……。
いや、
ちょっと待て。
精密機器の横で、
機関砲を撃つの?
今回は、
ガンダムの頭に付いている、
頭部バルカン
について考えてみます。
■RX-78-2のバルカンは60mm
まず、
初代ガンダム。
RX-78-2。
頭部に、
60mmバルカン砲を2門装備しています。
60mm。
ガンダムを見慣れていると、
「バルカンだから小さい武器」
という感覚になります。
でも、
60mmです。
人間が持つ小銃なんかとは、
まるで違う。
MS基準では小型でも、
現実の兵器として考えれば、
十分に大きな口径です。
それを、
頭に二門。
なかなか豪快です。
■しかも、その隣には「目」がある
前回の記事で書きました。
MSの頭部は、
センサータワーみたいなもの。
敵を見る。
距離を測る。
情報を集める。
通信する。
つまり、
できれば、
静かに仕事をしてほしい場所です。
その横で、
ダダダダダダッ!
……。
大丈夫なのか。
発射すれば、
振動が出る。
熱も出る。
発射ガスもある。
砲そのものにも荷重がかかる。
なのに、
すぐ近くには、
メインカメラや各種センサー。
僕が精密機器の設計担当なら、
たぶん、
武器担当と会議になります。
■なぜ、わざわざ頭に付けたのか
だったら、
胸でいい。
腕でもいい。
肩でもいい。
なぜ、
頭なのか。
ここで考えられるのが、
射線です。
頭は、
MSの中で高い位置にある。
前方を向いている。
しかも、
首が動く。
つまり、
頭部バルカンは、
MSの視線と、
かなり近い方向へ向けられる。
敵を見る。
頭を向ける。
その方向へ、
そのまま撃てる。
これ、
意外と合理的です。
■「見ている方向へ撃てる」という強み
人間で考えると、
分かりやすい。
顔を向けた方向へ、
武器も向く。
右を見る。
右へ撃てる。
左を見る。
左へ撃てる。
MS全体を、
いちいち旋回させなくてもいい。
もちろん、
頭部の可動範囲には限界があります。
でも、
近距離の目標へ、
素早く対応する補助武装としては、
使いやすそうです。
特に、
巨大なビーム・ライフルを振り回すほどでもない相手。
そういう目標には、
頭部バルカンの方が早い。
■そもそも何を撃つための武器なのか
ここ、
重要です。
ガンダムには、
ビーム・ライフルがあります。
ビーム・サーベルもある。
ハイパー・バズーカもある。
MSを倒すなら、
そっちを使った方がいい。
では、
バルカンは何のためなのか。
劇中では、
牽制。
近距離攻撃。
航空機などへの攻撃。
ミサイルなどへの対応。
さまざまな場面で使われます。
つまり、
主役ではない。
「わざわざ主武装を使うほどでもない仕事」を引き受ける武器。
これが、
頭部バルカンなのだと思います。
■戦車にも機関銃が付いている
現実の兵器を考えても、
主砲だけでは戦いません。
戦車には、
大口径の主砲があります。
でも、
機関銃も付いている。
なぜか。
何にでも主砲を撃つ必要はないから。
小さな目標。
歩兵。
軽装甲車両。
近距離の脅威。
用途に合わせて、
武器を使い分ける。
ガンダムも同じ。
ビーム・ライフルが主砲なら、
頭部バルカンは、
機関銃に近いポジション。
そう考えると、
かなり分かりやすい。
■そして「武器を持っていなくても撃てる」
これも、
大きいと思います。
ビーム・ライフル。
手で持つ。
バズーカ。
手で持つ。
ビーム・サーベル。
手で持つ。
では、
その武器を落としたら?
両手が塞がっていたら?
武器を持ち替えている途中だったら?
頭部バルカンなら、
関係ありません。
機体に内蔵されている。
つまり、
パイロットが最後まで失いにくい武器。
前回のザクのスパイクアーマーと、
ちょっと似ています。
手持ち武器がなくても、
まだ攻撃手段が残る。
兵器としては、
結構大事です。
■でも問題は、弾をどこに入れるのか
さて。
ここからが、
僕の好きなところです。
60mmバルカン。
二門。
撃つには、
当然、
弾が必要。
その弾、どこに入ってる?
ガンダムの頭を見ます。
小さい。
いや、
人間から見れば巨大ですが、
MS全体から見れば小さい。
しかも、
中には、
カメラ。
センサー。
通信機器。
アンテナ関連。
首の可動機構。
いろいろ入っている。
その隙間へ、
60mm弾。
■60mm弾って、そんなに小さくない
60mm。
弾頭だけの直径でも、
6cm。
さらに、
薬莢や装薬などを含む弾薬全体となれば、
当然もっと大きくなる。
それを、
何十発。
何百発。
もし大量に積むなら、
かなりのスペースが必要です。
頭部に全部入れる。
難しそう。
胴体から給弾する。
今度は、
首を通して弾を送る必要がある。
しかも、
首は回る。
……。
設計者、また大変です。
■首を回しながら給弾できるのか
これ、
考え始めると止まりません。
もし、
弾薬を胴体側へ置く。
そこから、
頭部へ給弾する。
すると、
給弾経路が、
首を通る。
でも、
頭は左右へ回る。
上下にも動く。
その状態で、
60mm弾を、
詰まらせずに送る。
かなり複雑な機構になりそうです。
だったら、
頭部に弾倉を置く。
今度は、
弾数が限られる。
どっちにしても、
簡単ではない。
■だから「撃ち続ける武器」ではないのかもしれない
ここから考えると、
頭部バルカンは、
ザク・マシンガンのように、
長時間撃ち続ける武器ではないのかもしれません。
必要な時だけ、
短く撃つ。
敵を牽制する。
ミサイルを落とす。
接近する敵へ撃つ。
そして、
主武装へつなぐ。
つまり、
弾数が限られていても成立する武器。
そう考えると、
頭部という狭い場所へ搭載することにも、
少し納得できます。
■でも発射時の振動は、やっぱり気になる
そして、
最初の疑問へ戻ります。
撃つ。
振動。
センサー。
大丈夫なのか。
ここは、
当然、
設計段階で対策されているはずです。
砲そのものを、
強固なフレームへ固定する。
振動を吸収する。
センサー類を、
防振構造にする。
発射熱を逃がす。
ガンダムの頭部は、
外から見ると顔ですが、
中身は、
かなり高度な機械構造になっているはずです。
でも、
整備する側からしたら、
絶対に面倒です。
■モノアイの横にバルカンを付けたら嫌だ
ここで、
ザクを考えます。
ザクの頭。
モノアイ。
かなりシンプル。
そこへ、
60mmバルカンを二門。
入れてみる。
……。
似合わない。
という話ではなく、
モノアイの可動機構。
センサー。
通信装置。
その横へ、
砲身。
弾薬。
給弾機構。
一気に、
頭がパンパンになります。
そう考えると、
ザクが、
基本的に手持ち武器中心なのも、
機械としては分かりやすい。
■ガンダムは「全部入り」だったのかもしれない
RX-78-2。
試作MS。
高性能。
ビーム・ライフル。
ビーム・サーベル。
シールド。
バズーカ。
コア・ブロック・システム。
そして、
頭部バルカン。
考えてみれば、
ものすごい。
とにかく、
いろいろ積んでいる。
新しいMSという兵器に、
考えられるものを、
できるだけ入れた。
そういう試作機らしさが、
頭部バルカンにもあるような気がします。
■そしてジムにも受け継がれる
面白いのは、
頭部バルカンという考え方が、
ガンダムだけで終わらなかったこと。
ジム系。
ガンダム系。
その後も、
頭部へ小型火器を搭載するMSは、
たくさん登場します。
つまり、
実戦で、
「これ、結構使えるな」
となった。
少なくとも、
宇宙世紀の兵器思想としては、
一定の価値があったと考えられる。
試作機の装備が、
量産機へ受け継がれる。
こういう流れ、
僕は好きです。
■時代が進んでも残る理由
MSは、
どんどん進化します。
ムーバブル・フレーム。
全天周囲モニター。
高出力ジェネレーター。
サイコミュ。
サイコフレーム。
ミノフスキー・フライト。
でも、
頭部の小型火器。
残る。
なぜか。
おそらく、
便利だから。
技術がどれだけ進んでも、
「ちょっと撃ちたい」
場面はなくならない。
ビーム・ライフルを使うほどではない。
でも、
何も撃てないのは困る。
だから、
頭に付けておく。
ものすごく地味ですが、
兵器らしい発想です。
■ただし、整備兵には嫌われそう
ガンプラなら、
頭を組んで終わりです。
でも、
本物のMSなら。
砲身を点検する。
弾薬を補給する。
給弾機構を見る。
センサーを調整する。
アンテナを見る。
カメラを見る。
首の可動部を見る。
しかも、
全部、
同じ狭い場所。
僕が整備兵なら、
ガンダムが帰ってくるたび、
パイロットへ聞きます。
「今日、バルカン撃ちました?」
パイロット。
「いっぱい。」
僕。
「……そうですか。」
■ガンプラの頭を見る目が変わる
ガンプラを作っていると、
頭部って、
小さいパーツです。
アンテナを折らないようにする。
ツインアイにシールを貼る。
バルカンを塗り分ける。
それくらい。
でも、
実機だと思って考える。
この中に、
センサー。
カメラ。
通信機器。
首の機構。
そして、
60mmバルカン。
さらに、
弾薬まで入っているかもしれない。
めちゃくちゃ高密度です。
小さい頭なのに、
仕事量がおかしい。
■しめ
ガンダムの頭部バルカン。
精密センサーの横で、
60mm砲を撃つ。
考えれば考えるほど、
結構すごい装備です。
振動。
熱。
弾薬。
給弾。
スペース。
どれを取っても、
簡単ではない。
でも、
頭部に搭載するメリットもある。
見ている方向へ、
素早く撃てる。
手を使わない。
主武装を失っても、
攻撃できる。
小さな目標へ、
大きな武器を使わなくて済む。
そして、
MSという兵器が進化した後も、
頭部火器という考え方は残った。
つまり、
見た目以上に、
使い勝手が良かったのかもしれません。
ただ、
一つだけ。
頭の中に、
カメラ。
センサー。
アンテナ。
通信機器。
砲身。
弾薬。
全部入れる。
ガンダムの設計者。
頭、詰め込みすぎです。
そして、
それを整備する人。
本当に、
お疲れさまです。
今日はここまで。それでは、また別のお話で。