【第三部】ガンダムの装甲は、戦場でどう直したのか?
~18mの兵器を翌日も戦わせる。ルナ・チタニウムの補修技術を考える~
おはこんにちは。どうも僕です。
材料を作った。
加工した。
ガンダムが完成した。
めでたし、めでたし。
ではありません。
兵器なので、
壊れます。
むしろ戦争では、
ここからが本番です。
ザク・マシンガンを受ける。
ヒート・ホークで傷つく。
ビーム兵器を受ける。
転倒する。
関節が壊れる。
それでも次の戦闘には出なければならない。
今回はルナ・チタニウム三部作の最後。
ガンダムをどう直したのか。
です。
■最強の装甲でも、いつか壊れる
どんな材料にも限界があります。
一発の大きな攻撃だけではありません。
小さな荷重でも何度も繰り返せば、
疲労
が問題になります。
MSなら、
歩行。
着地。
急加速。
急減速。
格闘。
射撃時の反力。
そこへ被弾まで加わります。
外から見て傷がなくても、内部では微小な亀裂が進んでいる可能性がある。
だから本来なら、
「穴が開いていないから大丈夫」
ではありません。
非破壊検査のような技術で内部損傷まで確認する必要があるでしょう。
■装甲は「直す」より「交換する」方が早い?
戦場で最も大切なのは、
新品同様に戻すことではありません。
次の出撃に間に合わせること。
ここが工場との最大の違いです。
例えば損傷したルナ・チタニウム装甲を、その場で完全に溶接修復する。
材質。
温度。
熱処理。
寸法。
全部元通り。
そんなことを毎回やっていたら出撃できません。
だったら、
損傷した装甲を外す。
新品のパネルを持ってくる。
交換する。
この方が合理的です。
つまりMSの装甲は、
防御材であると同時に、交換部品として設計されていた可能性
があります。
■だから「予備部品」が戦闘力になる
ここで兵站の話になります。
ガンダム一機を運ぶ。
それだけでは戦えません。
予備の装甲。
関節。
アクチュエーター。
センサー。
配管。
電子部品。
武器。
推進剤。
弾薬。
そして、それを交換する整備員。
必要なのはMS一機ではなく、
MSを一機戦わせ続けるシステム。
以前、ホワイトベースの生活や整備について考えましたが、材料工学から見ても同じところへ行き着きます。
強い兵器ほど、
その裏側に巨大な支援システムが必要になります。
■ルナ・チタニウムは現場泣かせだった?
もしルナ・チタニウムが非常に加工しにくい材料だったなら。
ホワイトベースの整備員は大変です。
普通の工具では削れない。
普通の溶接では性能が戻らない。
専用設備が必要。
交換部品も高価。
しかもガンダムは試作機。
量産機ほど部品が潤沢にあるとは限りません。
つまり、
装甲は強い。でも壊れたときが面倒。
兵器としてはかなり厄介です。
■ここでもGMが勝ってくる
そして、またGMです。
三回ともGMが出てきました。
でも偶然ではありません。
材料を考えても。
加工を考えても。
補修を考えても。
最後は量産機へ行き着く。
多少性能が低くても、
材料が手に入りやすい。
加工しやすい。
部品が共通化されている。
交換品が大量にある。
整備員が慣れている。
この方が戦争では強い。
例えば、
ガンダム一機を修理するのに二日。
GMなら同程度の損傷を数時間で復帰できる。
もしそうなら、
カタログスペックではガンダムが圧勝でも、
一か月の戦争で何時間戦場に立てるか
では差が縮まるかもしれません。
兵器の性能とは最高速度や装甲厚だけではない。
稼働率も性能です。
■「現地修理」という妥協
もちろん戦場では、完璧に直せない場合もあるでしょう。
少し歪んでいる。
装甲の色が違う。
左右で部品が違う。
応急処置の板が付いている。
それでも動くなら出す。
現実の戦場でも珍しくない考え方です。
だから一年戦争後半のMSをもっと現実的に描いたら、
新品のように美しい機体ばかりではなく、
交換された装甲。
焼けた部分。
違う色の部品。
応急補修跡。
そんなMSが大量にいたはずです。
個人的には、
そのガンダム、めちゃくちゃ見たい。
ガンプラでウェザリングしたくなります。
■材料の「強さ」と兵器の「強さ」は違う
三部作を通して見えてきたものがあります。
第一部では、
ルナ・チタニウムそのものの性能を考えました。
第二部では、
その材料を加工する難しさを考えました。
第三部では、
壊れたあとを考えました。
すると「最強の材料」の意味が変わってきます。
軽い。
硬い。
強い。
それだけでは足りない。
安く作れる。
加工できる。
品質を揃えられる。
現場で交換できる。
修理できる。
大量に供給できる。
そこまで揃って、
初めて兵器として優秀な材料になる。
■ガンプラを見る目も少し変わる
ガンプラを作ると、
どうしても表面を見ます。
色。
ディテール。
デカール。
ウェザリング。
でも今回の三部作を考えたあとなら、
装甲の「境目」を見てほしい。
このパネルはどう固定されているのか。
ここが被弾したらどこまで交換するのか。
整備員はどこから工具を入れるのか。
この巨大な脚部装甲を、どうやって外すのか。
そう考えながらRX-78-2を眺めると、
プラスチックの分割線まで、
整備用パネルの境界
に見えてきます。
これはなかなか楽しい。
■三部作のしめ
ルナ・チタニウム。
最初は、
「ガンダムのすごく強い装甲」
という話でした。
でも材料工学から追ってみると、それだけではありませんでした。
材料を作る人がいる。
加工する人がいる。
検査する人がいる。
運ぶ人がいる。
交換する人がいる。
修理する人がいる。
そしてようやく、
アムロが乗れる。
ガンダムが強かったのは、
ルナ・チタニウムが強かったから。
それは間違いではないでしょう。
でも本当は、その金属をガンダムの形にして、壊れたら再び戦える状態へ戻す。
その技術全部を含めて「ガンダムの装甲」だった。
そう考えると、
僕にはルナ・チタニウムそのものより、
それを扱えるようになった宇宙世紀の工業力の方が恐ろしく見えてきます。
18mの人型兵器を作る技術。
もちろんすごい。
でももっとすごいのは、
18mの人型兵器を、毎日直して戦場へ送り返せる技術。
兵器にとって最高の材料とは、
最も硬い材料ではない。
最も高価な材料でもない。
作れて、直せて、また戦える材料。
もしかすると、それが本当の「最強」なのかもしれません。
今日はここまで。それでは、また別のお話で。