【第一部】ルナ・チタニウムは、本当に最強の装甲材なのか?
~RX-78-2を守った金属を、材料工学から考える~
おはこんにちは。どうも僕です。
ザク・マシンガンを受けても、簡単には倒れない。
初めてガンダムを見たジオン兵が驚いたもの。
それはビーム・ライフルだけではありません。
装甲です。
RX-78-2に採用された、ルナ・チタニウム合金。
のちにガンダリウム合金と呼ばれることになる、宇宙世紀を代表する材料です。
でも今回は、
「未来のすごく硬い金属です」
では終わらせません。
材料工学として考えたとき、ルナ・チタニウムの何がそんなに革新的だったのでしょう。
■装甲は「硬ければいい」わけではない
装甲と聞くと、
硬い=強い。
そんなイメージがあります。
でも実際の材料は、そんなに単純ではありません。
必要なのは、
強度。
硬度。
靱性。
疲労強度。
耐熱性。
耐食性。
そして密度。
例えば非常に硬くても、衝撃を受けた瞬間に割れてしまったら装甲として困ります。
逆に粘り強くても、重すぎればMSには向かない。
RX-78-2は立っているだけではありません。
走る。
跳ぶ。
着地する。
宇宙では加速と減速を繰り返す。
そこへザク・マシンガンまで飛んでくる。
つまりガンダムの装甲には、
防弾性能と構造材としての性能を同時に求められる。
ここが戦車の装甲とは少し違うところです。
■なぜ「チタン」なのか
現実の材料を見てみます。
鉄鋼の密度は、およそ7.8g/cm³。
チタンは、およそ4.5g/cm³。
アルミニウムなら約2.7g/cm³です。
チタンはアルミほど軽くありません。
しかし鉄鋼よりかなり軽い。
そしてチタン合金には、高い比強度や優れた耐食性といった特徴があります。
この、
「軽いのに強い」
という性質が重要です。
航空機にチタン合金が使われる理由の一つもここにあります。
そしてMSは、巨大な人型機械です。
だったら戦車以上に「重量」が効いてくる。
■装甲が軽くなると、全部が軽くなる
ここが今回一番重要なところです。
仮に装甲重量を大きく減らせたとします。
軽くなるのは装甲だけではありません。
脚部アクチュエーターへの負荷が減る。
関節への荷重が減る。
着地時の衝撃が減る。
姿勢制御に必要な力も減る。
宇宙なら、同じ加速度を得るために必要な推力も小さくできる。
さらに推進剤も減らせる。
すると推進剤を運ぶ構造も軽くできる。
つまり、
軽量化が次の軽量化を呼ぶ。
航空機やレーシングカーでも非常に重要な考え方です。
ルナ・チタニウムの本当の価値は、
「ザク・マシンガンを弾くほど硬かった」
だけではないのかもしれません。
MSという機械全体を軽く設計できる材料だった。
僕はこっちの方が重要だったと思います。
■だったら全部ルナ・チタニウムにすればいい
当然そう思います。
ガンダムが強かった。
ルナ・チタニウムが優秀だった。
ならGMも戦艦も全部これで作ればいい。
でも兵器は、性能だけでは決まりません。
問題になるのが、
値段と生産性です。
現実のチタンも鉄ほど気軽に扱える材料ではありません。
原料から金属チタンを得る工程も複雑。
加工にもノウハウが必要。
さらに宇宙世紀のルナ・チタニウムは、名前の通り月面で精製された特殊なチタン系合金として設定されています。
高性能でも、
大量に作れない。
加工に時間がかかる。
高価。
そうなれば量産兵器には使いにくい。
■ガンダムは「材料から違う試作機」だった
こう考えるとRX-78-2の立ち位置が面白くなります。
ガンダムは単に、
高性能ジェネレーターを積んだ。
ビーム・ライフルを持った。
という試作機ではない。
材料から贅沢だった。
自動車でいえば、市販車では鉄を使う部分にチタンやカーボンを投入するようなもの。
速い。
軽い。
強い。
でも高い。
試作機だからできた。
そして戦争になれば必要なのは、
最高の一機ではなく、
十分に強い百機です。
だからGMが生まれる。
材料工学から見ると、ガンダムからGMへの流れは、
性能の劣化ではなく「工業製品への進化」
だったとも考えられます。
■第一部の結論
ルナ・チタニウムの革命。
それは、
「ものすごく硬い装甲」
だったことだけではない。
軽量でありながら高い強度を持つことで、
機体全体の重量。
関節。
推進系。
運動性能。
それらすべての設計自由度を広げたこと。
つまりガンダムの強さは、
ビーム・ライフルを撃つ前から始まっていた。
材料を選んだ瞬間から、RX-78-2は強かった。
ところが。
ここで次の問題が出てきます。
そんなに強い材料。
いったい、
どうやって18mのガンダムの形にしたのでしょう。
今日はここまで。それでは、また別のお話で。