~宇宙では熱が逃げない。斬られたモビルスーツの中で何が起きるのか~
おはこんにちは。どうも僕です。
ガンダムの武器で、一番好きなものは何でしょう。
ビーム・ライフル。
バズーカ。
ファンネル。
色々ありますが、やっぱり外せないのが、
ビーム・サーベル。
背中からスッと抜く。
ピンク色の刃が伸びる。
振る。
ザクが斬れる。
子供の頃は、それで十分でした。
でも大人になって見ると、一つ気になります。
あれ、いったい何℃なんだ?
いや、もっと気になる。
あれだけの熱量でMSの装甲を一瞬で切断したあと、その熱はいったいどこへ行くのでしょう。
今回は「温度」から始めて、ビーム・サーベルを熱工学から考えてみます。
■そもそもビーム・サーベルは「熱い棒」ではない
最初にここを整理しておきます。
ビーム・サーベルは、金属の刀身を高温に加熱している武器ではありません。
ガンダム世界では、ビーム兵器にミノフスキー物理学が深く関係しています。
つまりスター・ウォーズ的な「光の剣」と単純に考えるより、高エネルギー状態のビームを一定の形に閉じ込め、近接戦闘用の刃として利用する兵器と考えた方が近い。
だから「刃そのものが何℃」という質問も、実は少し難しい。
炎の温度を測るように、単純に表面温度○○℃と表せる物体ではない可能性が高いからです。
そして公式設定でも、「RX-78-2のビーム・サーベルは○○℃」というような数字を、僕は今回確認できませんでした。
なので、
何百万℃です。
なんて数字を適当に書くのはやめます。
大切なのは温度そのものより、
装甲を破壊するだけのエネルギーを、どれほど短時間で対象へ渡しているのか。
こっちです。
■ザクの装甲を「斬る」とはどういうことなのか
金属を刀で斬る。
これは刃物の力で材料を破断させています。
ところがビーム・サーベルの場合、同じ現象とは考えにくい。
あれだけ滑らかにMSの装甲を切断するなら、接触した部分へ猛烈なエネルギーを与え、
加熱。
軟化。
溶融。
場合によっては蒸発。
そうした現象を極めて短時間に発生させながら進んでいる、と考える方が自然でしょう。
つまりビーム・サーベルは、
「切る」というより、通過した部分の材料を急激に破壊している。
そう考えると、急に怖くなります。
■本当に怖いのは、切断した「あと」
例えばガンダムがザクの腹部を横から斬ったとします。
ビーム・サーベルが通過した部分だけを考えると、
「はい、切れました」
で終わり。
でも熱工学的には終わりません。
切断面には猛烈な熱が残ります。
そして金属は熱を伝える。
これが、
熱伝導。
フライパンを火にかけると、火が直接当たっていない取っ手側まで熱くなる。
MSでも同じです。
装甲からフレーム。
フレームから配管。
配線。
電子機器。
そして周辺構造へ。
熱は機体内部へ広がっていきます。
だからビーム・サーベルの被害は、
「幅数cmの切断線」だけでは済まない可能性がある。
■その先に推進剤があったら?
ここからさらに怖い。
MSの内部には何があるでしょう。
電子機器。
油圧・流体系統。
推進剤。
弾薬。
ジェネレーター。
そしてコックピット。
つまり、熱に弱いものが山ほど入っています。
装甲そのものは切断に耐えられなくても、その内側の機器が直接ビームへ触れなければ助かる――とは限らない。
高温になった構造材から熱が伝わり、配線の絶縁材が損傷する。
センサーが故障する。
配管が破損する。
推進剤系統へ影響する。
弾薬が加熱される。
場合によっては、切断そのものより二次被害の方が致命的になる可能性があります。
■宇宙は冷たい。だからすぐ冷える?
ここで、よくあるイメージ。
「宇宙ってものすごく寒いんだから、すぐ冷えるんじゃない?」
実は、そう簡単ではありません。
宇宙空間はほぼ真空です。
地球上では、熱は大きく、
熱伝導・対流・熱放射
によって移動します。
ところが真空には、熱を運んでくれる空気がほとんどない。
NASAも、真空中では外部への熱移動は主として放射で行われ、物体内部では伝導が重要になると説明しています。
つまり、
宇宙には「冷たい空気」が吹いているわけではない。
熱くなったMSへ宇宙の冷風が当たり、急速に冷やしてくれるわけではありません。
■宇宙では「熱を捨てる」のが難しい
これは現実の宇宙船でも大きな問題です。
宇宙船内部では、
コンピューター。
生命維持装置。
人間。
電源。
様々なものが熱を発生させます。
その熱を最終的には宇宙へ放出しなければならない。
そこで使われるのがラジエーターなどの熱制御システムです。
NASAの宇宙機でも、余分な熱を運び、最終的に熱放射として宇宙へ捨てることが重要な設計課題になっています。
だから宇宙で戦うMSも、本当ならものすごい熱設計が必要なはずです。
ジェネレーターを動かす。
スラスターを噴かす。
ビーム・ライフルを撃つ。
ビーム・サーベルを使う。
それだけでも熱は増えていく。
そこへ敵のビーム・サーベルで装甲まで焼かれたら。
かなり嫌な状況です。
■ただし「宇宙では熱が逃げない」は半分だけ正しい
ここはタイトルにも関わるので、少し正確にしておきます。
宇宙でも熱は逃げます。
熱放射があります。
温度を持つ物体は電磁波としてエネルギーを放出するので、真空だから永久に熱いわけではありません。
むしろ非常に高温になった部分は、強い熱放射を出す。
だから切断面も徐々に冷えていきます。
ただし地球上のように、
空気へ熱を渡す。
風が熱を運ぶ。
という対流冷却が使えない。
だから、
「宇宙=すぐ凍る」ではない。
ここが重要です。NASAも真空中では伝導と放射が熱管理の中心になると説明しています。
■じゃあ地上戦の方が安全なのか
では地球上ならどうでしょう。
空気があります。
対流があります。
高温になった装甲周辺の空気が暖められ、上昇し、別の空気と入れ替わる。
つまり宇宙より熱を逃がす経路が一つ増える。
ただし、これも単純に「地上の方が安全」とは言えません。
ビーム・サーベルが大気中で超高温の現象を作れば、周囲の空気そのものが急激に加熱される可能性があります。
さらに溶けた金属。
蒸発した材料。
燃焼可能な部品。
それらが大気と接触する。
宇宙とは違う意味で、とんでもないことになる。
つまり同じビーム・サーベルでも、
宇宙と地上では、周囲に与える熱的な影響が違うはず。
これ、映像ではほぼ一瞬ですが、想像すると面白い。
■コックピットの横を斬られたら?
これが一番怖い。
MSのコックピットは、機体中央付近に配置されることが多い。
そしてビーム・サーベル戦では、胴体を狙われることも多い。
仮にサーベルがコックピットそのものへ触れていなくても、そのすぐ横の装甲を通過したらどうなるか。
まず装甲が急激に加熱される。
切断面から強烈な熱放射。
構造材を通じた熱伝導。
さらに内部の気密区画まで破壊されたら、減圧も起きる。
パイロットにとっては、
「斬られなかったからセーフ」ではありません。
むしろ数十cm横を通過しただけでも、かなり危険なのではないでしょうか。
■なら、なぜガンダム自身は熱くならない?
今度は攻撃側。
ガンダムがビーム・サーベルを持っています。
柄から数十cm先に、とんでもないエネルギーの刃がある。
普通に考えると、
手、大丈夫?
となります。
もし単なる超高温の金属棒なら、柄へ熱が伝わって大変なことになります。
でもビーム・サーベルは、刀身と柄が同じ固体材料でつながった剣ではない。
エネルギーをフィールドによって一定範囲へ形成していると考えれば、固体の刀身から柄へ直接熱伝導する普通の剣とは事情が違う。
むしろ問題になるのは、
発生装置そのものの発熱。
電力供給。
エネルギー変換効率。
周囲から受ける熱放射。
この辺りでしょう。
だからサーベルの柄には、未来の技術とはいえ相当な熱対策が入っているはずです。
小さな柄。
でも中身は、とんでもない高エネルギー機器。
そう考えると、ビーム・サーベルの見方が変わります。
■そして最大の謎。「鍔迫り合い」
ガンダムではお馴染み。
ビーム・サーベル同士がぶつかる。
ガキーン。
いや。
ちょっと待って。
どちらも物理的な金属刀身ではありません。
だったら、なぜすり抜けない?
ここで重要になるのが、ビームの形状を維持しているフィールド同士の相互作用という考え方です。
つまりサーベルの「刃」がぶつかっているというより、
刃を閉じ込めている場同士が干渉している。
そう考えれば、鍔迫り合いにもある程度の説明を与えられる。
もっとも、これも現実のプラズマカッターを二本ぶつけたらガンダムのように鍔迫り合いできる、という話ではありません。
ここは完全にミノフスキー物理学の世界です。
■では、ビーム・サーベルは何℃なのか?
結局ここへ戻ります。
答えは、
分からない。
少なくとも今回確認できた公式資料から、単純な温度を断定できる数字は見つかりませんでした。
でも、むしろそれでいいと思います。
ビーム・サーベルの恐ろしさを表すのに、
「○万℃」
という数字は必ずしも必要ありません。
重要なのは、
MSの装甲材へ、極めて短時間で構造を破壊できるだけのエネルギーを与えられること。
温度ではなく、
エネルギー密度。
接触時間。
材料側の融点。
熱伝導率。
比熱。
そしてビームを閉じ込めるフィールド。
実際の破壊現象を考えるなら、こちらの方がずっと重要です。
■ガンプラで見る「小さな高エネルギー兵器」
こういう話をしたあとにガンプラを見ると、面白いです。
例えばRX-78-2。
背中に刺さっている二本のビーム・サーベル。
子供の頃は単なる「剣の柄」に見えていました。
でも今回の考察を踏まえると、
あの小さな部品の中に、
エネルギー制御。
フィールド形成。
熱対策。
安全装置。
MSとのエネルギー接続。
それらが全部入っているはず。
むしろ、
ガンダム本体より、この小さな筒の方が未来技術の塊なのでは?
と思えてきます。
現在のRX-78-2なら、RG 1/144 RX-78-2 ガンダム Ver.2.0などでもビーム・サーベルを含む装備を立体でじっくり観察できます。
ガンプラを作る時、今回はぜひビーム刃ではなく、
「柄」
を見てみてください。
あそこから、今回の全部が始まっています。
■しめ
ビーム・サーベル。
子供の頃は、
「光る剣」。
それだけでした。
でも熱工学から考えてみると、かなり怖い兵器です。
装甲を切断する。
そこで終わらない。
切断面に残された熱は構造材へ伝わる。
電子機器へ伝わる。
配管へ伝わる。
推進剤や弾薬へ影響する可能性もある。
そして宇宙では、地球上のように空気へ熱を逃がすこともできない。
最終的には熱放射によって宇宙へ捨てるしかない。
だから僕は、
ビーム・サーベルの本当に怖いところは、
「斬ること」だけではない
と思います。
斬ったあと。
そこに何を残すのか。
傷口のように赤熱した装甲。
その奥へ広がっていく熱。
警報が鳴るコックピット。
落ちていく電装系。
それでも宇宙には、冷たい風ひとつ吹かない。
そう考えてからビーム・サーベル戦を見ると、
あの一瞬の斬撃が、少し違って見えてきます。
そして次にガンプラを作る時。
背中からサーベルを一本抜いてみてください。
たった数cmのプラスチックの棒。
でも設定の中では、
18mの兵器を一瞬で殺せる、恐ろしく小さな熱工学の塊です。
今日はここまで。それでは、また別のお話で。