おはこんにちは。どうも僕です。
前回は、ガンダムを作る「材料」について考えました。
ルナ・チタニウム。そしてガンダリウム合金。
軽い。強い。熱にも強い。
材料が進化すれば装甲を薄くでき、機体を軽くできる。そうなれば推進剤や武装に重量を回すこともできる。
ここまでは、まだ分かります。
現実のチタン合金や複合材料の延長線上に、「未来にはこんな金属があるかもしれない」と想像できる。
ところが宇宙世紀は、ここから突然おかしな方向へ進みます。
金属に、人間の意思を読ませ始める。
それが、
サイコフレーム。
今回は三部作の第二部。
サイコフレームという材料を、できるだけ「オカルトだから」で終わらせずに考えてみます。
■そもそもサイコフレームとは何なのか
サイコフレームの発想は、かなりぶっ飛んでいます。
従来のサイコミュ装置を小型化するだけではなく、その機能をMSの構造材――フレームそのものへ組み込んでしまう。
つまり、
構造材と電子機器を一体化した材料。
普通のMSなら、骨格があり、その中や周囲にコンピューター、センサー、配線、制御装置を配置します。
ところがサイコフレームでは、「骨格そのもの」が情報を扱う側へ近づいていく。
これは材料工学的に考えると、かなり面白い発想です。
■「材料は材料」という常識が崩れる
鉄骨は建物を支える。
アルミ合金は飛行機を軽くする。
炭素繊維複合材は、軽さと強度を両立する。
基本的に構造材の役割は、
荷重を受けること。
ところがサイコフレームは違う。
機体を支えながら、人間から情報を受け取る。
そして機械へ伝える。
もし現実世界の言葉に置き換えるなら、
「巨大なセンサーそのものが機体の骨格になっている」
ようなものです。
実は、考え方だけなら完全な夢物語とも言い切れません。
■現実にも「賢い材料」は存在する
現代には「スマートマテリアル」と呼ばれる考え方があります。
温度によって形が変わる形状記憶合金。
電圧を加えると変形したり、逆に力を受けることで電気的な応答を示したりする圧電材料。
磁場に反応する材料。
さらに構造物の内部へセンサーを組み込み、ひずみや損傷を自ら検出する「構造ヘルスモニタリング」という技術も研究・実用化されています。
飛行機の翼そのものが、
「ここに負荷が掛かっています」
と教える。
橋が、
「ここに亀裂が入りそうです」
と知らせる。
つまり、
材料とセンサーの境界は、現実でも少しずつ曖昧になっている。
サイコフレームは、その考え方を宇宙世紀まで猛烈に進化させたもの、と見ることもできます。
■そして「配線」が消えていく
これも重要だと思います。
普通の機械は、
センサー
↓
配線
↓
コンピューター
↓
制御装置
↓
アクチュエーター
というように、情報をいくつもの装置へ渡していきます。
どれだけ高速化しても、間には必ず処理が入る。
でも、もし機体のフレーム全体がセンサーであり、情報伝達経路であり、制御装置でもあったら?
人間が、
「右へ避けたい」
と思う。
機械がそれを受け取る。
そして動く。
操縦桿を動かしてからMSが反応するのではなく、
「動かしたい」という意思そのものが入力になる。
サイコミュが目指していたものが、ここにあります。
■だからニュータイプと相性がいい
ニュータイプは、非常に高い空間認識能力や感応能力を持つ存在として描かれます。
だからファンネルのような遠隔兵器を扱える。
でも、いくらパイロット側の能力が高くても、機械がそれを受け取れなければ意味がありません。
そこでサイコフレーム。
人間とMSの間にあった、
「操縦する」という工程そのものを短くする。
これは兵器として、とんでもない意味を持ちます。
戦闘では0.1秒が生死を分ける。
目で見る。
判断する。
手を動かす。
操縦桿が入力を拾う。
コンピューターが処理する。
機体が動く。
その途中を少しでも飛ばせるなら、それだけで大きなアドバンテージになる。
■νガンダムとサザビー
そして『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』。
νガンダムとサザビーにはサイコフレームが採用されます。
ここで面白いのが、サイコフレームが最初から「奇跡を起こす装置」として作られたわけではないこと。
本来の狙いは、サイコミュの小型化と機体追従性の向上。
つまり、
もっと速く、もっと直感的にMSを動かすための技術。
それが戦いの最後。
アクシズを巡る場面で、開発者たちすら想定していなかったような現象を起こしてしまう。
ここでサイコフレームは、
「高性能な制御材料」
という枠から外れ始めます。
■なぜ光った?
サイコフレームといえば、やっぱり光。
『逆襲のシャア』。
そして『UC』。
特にユニコーンガンダムでは、装甲が展開し、その内側から赤いサイコフレームが露出する。
ガンプラでも、この「内部から光っているように見える」表現が重要になっています。
2007年のMG ユニコーンガンダム Ver.Kaでは、全身のサイコフレームを特殊集光樹脂で再現。さらにMGEXでは内部にフレキシブルLEDシートを組み込み、赤から緑への発光変化まで再現しています。
でも劇中のサイコフレームは、単なるイルミネーションではありません。
人間の感応。
情報。
エネルギー。
それらが何らかの形で材料へ作用した結果として、光まで伴っているように描かれる。
ここから一気に、現代科学では説明しにくくなります。
■もし無理やり現代科学へ寄せるなら
ここからは僕の考察です。
例えばサイコフレームが、
超高密度のセンサー+情報伝達素子+エネルギー変換素子
を内包した複合材料だったらどうでしょう。
人間から何らかの信号を受け取る。
材料内部を情報が伝わる。
機体全体へ情報が拡散する。
そして外部へ何らかの電磁的な現象として現れる。
もちろん、現実には「人間の思考を金属が直接読み、MSを動かす」材料は存在しません。
でも方向性だけなら、
スマートマテリアル。
ブレイン・マシン・インターフェース。
分散型センサー。
メタマテリアル。
こうした現代技術の先に、ぼんやりとサイコフレームらしいものが見えてくる。
完全な魔法ではなく、
いくつもの未来技術を一つの材料へ押し込んだ存在。
そう考えると、ちょっと面白くなります。
■でもユニコーンは、明らかに一線を越えた
νガンダムの時代なら、
「パイロットの反応速度を高める特殊な構造材」
という説明で、なんとか踏ん張れます。
でもユニコーンになると難しい。
RX-0は全身へサイコフレームを採用した機体です。
つまり、コックピット周辺だけではない。
MSそのものをサイコフレームで包む方向へ進んだ。
これが重要です。
サイコフレームの量が増えれば、それだけ人間と機械をつなぐ「面積」も増える。
仮に感応能力が材料量や配置に影響されるのなら、全身サイコフレームという設計は、人間とMSの境界をさらに薄くすることになります。
■ガンプラで見ると、この進化が分かりやすい
今回の三部作、ガンプラを横に置いて見るとかなり面白いです。
まず、
MG νガンダム Ver.Ka。
このキットでは、サイコフレームが露出する独自ギミックが盛り込まれています。さらにGUNDAM SIDE-F限定では、「サイコフレーム発動イメージカラー」とした仕様まで商品化されています。
MG νガンダム Ver.Ka サイコフレーム発動イメージカラー|バンダイホビー公式WEB取説
そして、
MG/PG/MGEX ユニコーンガンダム。
ユニコーンでは、サイコフレームがデザインそのものになりました。
装甲が開く。
内部フレームが露出する。
赤く光る。
そして最終的には緑へ。
「材料」が、MSの外観まで変えてしまったわけです。
■そしてナラティブでは「後付け」される
さらに面白いのがナラティブガンダム C装備。
C装備はサイコフレームを外装へ取り付ける。
つまり、
完成したMSへ、あとからサイコフレームをまとわせる。
2024年発売のMG ナラティブガンダム C装備 Ver.Kaでも、このクリアピンクのサイコフレームが大きな特徴になっています。公式WEB取説では、同キットの新ディテールのサイコフレームパーツをMGユニコーンガンダム Ver.Kaへ組み込む方法まで案内されています。
ここまで来るとサイコフレームは、単なる「骨格」ではありません。
装備する材料。
人間と機械をつなぐインターフェース。
そして、何かを増幅する媒体。
そんな存在へ変わっているように見えます。
■問題は、誰が主導権を持っているのか
ここからが怖い。
普通の機械なら、人間が操作します。
操縦桿を倒す。
ボタンを押す。
機械が従う。
ところがサイコフレームは、人間の意思へ近づきすぎた。
もし人間の意識を機械が直接受け取れるなら、
どこまでが人間で、
どこからが機械なのか。
さらに逆方向はどうでしょう。
人間から機械へ情報が流れるなら、機械側にその情報が残る可能性はないのか。
ここまで来ると、材料工学の話ではなくなってきます。
でも宇宙世紀は、本当にそこまで行ってしまう。
■サイコフレームは「金属」なのか
最初の問いに戻ります。
サイコフレームは、本当に金属なのか。
僕なら、
「金属をベースにした情報材料」
と考えたい。
荷重を支える。
機体を構成する。
情報を受け取る。
情報を伝える。
人間と共鳴する。
そして時には、説明できない現象まで起こす。
第一部で考えたガンダリウム合金は、
人間を守る材料でした。
サイコフレームは、
人間と機械をつなぐ材料になった。
では、その先は?
■人間がいなくなったあとも、意思は残るのか
ここで一機のMSが出てきます。
金色のユニコーンガンダム。
RX-0 3号機。
フェネクス。
パイロットが操縦する兵器。
その常識すら、あの機体には当てはまらなくなっていく。
サイコフレームが人間の意思を受け取れるのなら。
それを増幅できるのなら。
もしかすると――
保存することまでできるのか。
もしそうなら。
フェネクスの中にいるのは誰なのか。
そもそも、あれをまだ「モビルスーツ」と呼んでいいのか。
第一部。
強い材料。
第二部。
意思を読む材料。
そして第三部は、
意思を宿す材料。
次回。
「フェネクスは、まだモビルスーツなのか?」
~サイコフレームがたどり着いた、人間と機械の境界~
材料工学から始めたこの話。
最後は少し怖いところまで行ってみようと思います。
今日はここまで。それでは、また別のお話で。