~一機のモビルスーツを支える「名もなき人たち」~
おはこんにちは。
どうも僕です。
ガンダムが、
出撃する。
カタパルトへ移動。
システム起動。
そして、
宇宙へ。
敵を見つける。
撃つ。
避ける。
戦う。
僕らが見ているのは、
だいたい、
ここです。
そして、
帰ってくる。
パイロットが、
コックピットから降りる。
物語は、
次のシーンへ。
でも。
モビルスーツは、
そのまま、
次の戦闘へ出られるのでしょうか。
たぶん、
無理です。
弾薬。
推進剤。
損傷。
熱。
汚れ。
関節。
センサー。
誰かが、
全部、
元へ戻さなければならない。
今回。
「モビルスーツの寿命を考える」シリーズ。
最後に考えたいのは、
機械ではありません。
その機械を戦える状態にしている、人間の話です。
■ガンダムは一人では飛べない
アムロが、
強い。
シャアが、
強い。
エースパイロット。
格好いい。
でも、
どれだけ凄いパイロットでも、
弾薬がなければ、
撃てない。
推進剤がなければ、
飛べない。
故障した脚は、
勝手には直らない。
つまり、
モビルスーツは、
パイロット一人では、
戦えません。
当たり前。
でも、
意外と忘れます。
■戦闘が終わった瞬間、次の戦闘が始まる
MSが、
母艦へ戻る。
整備兵からすれば、
ここからです。
まず、
機体状態を確認。
被弾。
装甲。
関節。
センサー。
武器。
推進器。
そして、
パイロットから、
話を聞く。
「右腕、
少し変だった。」
「スラスターの反応が、
遅かった。」
前回書いた、
人間の感覚も、
重要な整備情報です。
■まず弾薬を補充する
ザク・マシンガン。
頭部バルカン。
バズーカ。
ミサイル。
撃ったら、
なくなります。
誰かが、
運ぶ。
誰かが、
確認する。
誰かが、
装填する。
ビーム兵器だって、
無限ではない。
エネルギー。
交換式のエネルギーパック。
兵器によって、
補給が必要です。
つまり、
パイロットが、
引き金を一回引く。
その一発は、
格納庫で、
誰かが用意した一発です。
■推進剤も勝手には増えない
宇宙戦。
スラスター。
シュッ。
シュッ。
格好いい。
でも、
吹かすたび、
推進剤を使う。
帰還。
残量確認。
補給。
配管接続。
漏れ確認。
そして、
次の出撃。
つまり、
華麗な機動の裏側には、
毎回、
地味な補給作業があります。
■「補給」は戦闘シーンにならない
ここ、
面白いところです。
弾薬を積む。
燃料や推進剤を補給する。
部品を運ぶ。
記録する。
倉庫を管理する。
映像にすると、
地味。
でも、
一つでも止まれば、
モビルスーツは、
戦えない。
戦争というものは、
派手な部分より、
地味な部分の方が圧倒的に多い
のかもしれません。
■整備兵だけでも戦えない
そして、
その整備兵へ、
部品を届ける人が必要です。
右膝、
交換。
でも、
倉庫にない。
終了。
どれだけ腕のいい整備兵でも、
存在しない部品は、
付けられません。
だから、
補給部隊。
輸送艦。
倉庫。
工場。
メーカー。
全部、
つながっている。
■一機のザクの後ろには何人いる?
パイロット。
一人。
でも、
そのザクを動かすために、
何人が必要なのでしょう。
整備。
補給。
武器。
弾薬。
通信。
輸送。
管制。
医療。
食事。
艦艇運用。
さらに、
部品を作る人。
工場で、
装甲を作る。
配線を作る。
センサーを作る。
それを、
基地まで運ぶ。
つまり、
一機のザクの後ろには、
見えない人間が大量にいる。
■エース専用機は、実はものすごく贅沢?
ここで、
シャア専用機。
専用カラー。
専用調整。
高い性能。
格好いい。
でも、
兵站側から見ると、
少し違います。
専用部品。
専用設定。
場合によっては、
専用塗料。
特別な整備。
普通の量産機より、
手間がかかる可能性があります。
つまり、
エース専用機とは、
パイロットが凄いだけではなく、
その一人へ軍隊が大量のリソースを投入している状態
でもある。
■エース一人を支えるために
シャアが、
一機撃破。
また一機。
さらに一機。
僕らは、
シャアを見る。
でも、
その後ろには、
シャアの機体を、
毎回、
戦える状態へ戻している人がいる。
だったら、
エースの撃墜数は、
完全に一人だけの成果なのか。
少し、
見え方が変わります。
■「俺が直した機体だ」
整備兵からすれば、
違う感覚もあったでしょう。
自分が、
昨日直したザク。
出撃。
帰ってくる。
傷だらけ。
でも、
帰ってきた。
たぶん、
ちょっと、
嬉しい。
また、
直す。
翌日。
また、
出ていく。
つまり、
整備兵にとっても、
機体は、
ただの番号ではなくなっていく。
■そして帰ってこない機体もある
でも。
戦場です。
全部が、
帰ってくるわけではない。
昨日まで、
整備していた機体。
今日。
帰ってこない。
パイロットも、
帰ってこない。
空いた格納スペース。
これ。
かなり重いと思います。
■整備兵も戦争を見ている
パイロットは、
敵を見る。
撃つ。
撃たれる。
整備兵は、
帰ってきた機体を見る。
弾痕。
焼けた装甲。
曲がったフレーム。
血の付いたコックピット。
彼らは、
戦場へ直接出なくても、
戦争の結果を毎日触っていた
のかもしれません。
■そして、また直す
昨日。
仲間が死んだ。
今日。
機体を直す。
明日。
別のパイロットが乗る。
それでも、
整備する。
なぜなら、
直さなければ、
次の人間も、
帰ってこられないから。
これ。
整備という仕事の、
かなり重い部分だと思います。
■モビルスーツの寿命を延ばしているのは誰?
第1回。
ザクは、
何年戦えるのか。
第2回。
定期整備。
第3回。
共食い整備。
第4回。
パイロットと機体の馴染み。
そして、
今回。
全部をつなげると、
一つの答えが見えてきます。
モビルスーツの寿命を決めるのは、
機械だけではない。
人です。
■壊れたら終わりではない
腕が壊れる。
交換。
脚が壊れる。
交換。
センサーが壊れる。
交換。
部品がない。
探す。
ない。
作る。
それでもダメ。
別の機体から、
取る。
そうやって、
一機のモビルスーツを、
何年も生かす。
機械が、
自分で寿命を延ばしているわけではありません。
人間が、
延ばしている。
■でも、これは少し矛盾している
ここで、
妙なことに気づきます。
整備兵は、
機体を直す。
なぜ?
パイロットを、
生きて帰すため。
でも、
直した機体は、
また、
人を傷つけるために、
戦場へ行く。
人を守るために、
兵器を直す。
その兵器が、
別の人間を傷つける。
戦争って、
こういう矛盾を、
大量に抱えているのだと思います。
■敵側にも同じ人間がいる
そして、
忘れたくないのが、
これです。
連邦の整備兵。
「絶対、
帰ってこい。」
ジオンの整備兵。
たぶん、
同じことを言う。
どちらにも、
仲間がいる。
どちらにも、
家族がいる。
どちらにも、
帰ってきてほしい人がいる。
でも、
戦場では、
敵になる。
■モビルスーツは「正義」を判断しない
ガンダム。
ザク。
ジム。
機械です。
善も、
悪もない。
正義も、
知らない。
命令された通り、
動く。
引き金を引けば、
撃つ。
だから、
兵器に、
戦争の責任を負わせることはできません。
最後に、
それを動かすのは、
人間です。
■それでも兵器に憧れる
ガンダム。
格好いい。
ザク。
格好いい。
僕は、
今でも、
そう思います。
ガンプラを作る。
武器を持たせる。
ウェザリングする。
戦場を想像する。
純粋に、
機械として、
兵器として、
惹かれる。
それ自体は、
別に矛盾ではないと思っています。
■格好いいと、人を傷つけたいは違う
ここ。
大事にしたい。
兵器の造形に、
憧れる。
戦闘機。
戦車。
戦艦。
モビルスーツ。
機械として、
格好いい。
でも、
だからといって、
現実の戦争を望むわけではない。
むしろ、
兵器について考えるほど、
それを本当に使わなければならない状況の怖さ
も見えてきます。
■ガンダムが面白い理由
ガンダムは、
ロボットが、
格好いい。
それだけでも、
十分楽しい。
でも、
その後ろに、
人がいる。
パイロット。
整備兵。
補給。
民間人。
家族。
そして、
敵側にも、
同じ人間がいる。
だから、
40年以上経っても、
僕らは、
ガンダムについて、
考え続けるのかもしれません。
■シリーズを振り返る
ザクは、
何年使える?
そんな、
ちょっとした疑問から、
始まりました。
でも、
寿命を考えると、
整備へ行く。
整備を考えると、
部品へ行く。
部品を考えると、
兵站へ行く。
兵站を考えると、
人へ行く。
結局、
最後に残ったのは、
機械ではありませんでした。
人間。
これ。
妙に、
ガンダムらしい。
■しめ
戦闘終了。
一機のモビルスーツが、
格納庫へ戻ってくる。
装甲。
傷だらけ。
塗装。
剥げている。
右腕。
動きが悪い。
推進剤。
ほとんどない。
パイロットが、
降りる。
「頼む。」
整備兵。
機体を見上げる。
たぶん、
言う。
「また派手にやったな。」
そこから、
夜が始まる。
装甲を外す。
部品を交換する。
弾薬を積む。
推進剤を入れる。
センサーを調整する。
そして、
朝。
同じモビルスーツが、
もう一度、
立っている。
僕らが見ている、
ガンダムの一回の出撃。
その裏側には、
名前も出ない、
大量の人間がいる。
だから、
モビルスーツの本当の性能とは、
推力でも、
出力でも、
装甲でもないのかもしれません。
「もう一度、戦える状態に戻せること。」
そして、
それを可能にしているのは、
いつだって、
機械の外にいる、
人間です。
ガンダムを動かしているのは、
パイロット。
でも、
ガンダムを、
戦わせ続けているのは、決してパイロット一人ではない。
そんなことを考えながら、
次に格納庫のシーンを見たら。
画面の端にいる、
名もなき整備兵を、
少しだけ見てみようと思います。
今日はここまで。
それでは、また別のお話で。