~「馴染んだ機体」は本当に存在するのか~
おはこんにちは。
どうも僕です。
新品。
いいですよね。
ガンプラ。
箱を開ける。
袋を開ける。
まだ、
誰も触っていないランナー。
これ。
妙にテンションが上がります。
車でも、
時計でも、
機械でも。
基本的には、
新品の方が状態はいい。
だったら、
モビルスーツも、
当然、
新品の方が強い。
……はずです。
でも、
ガンダムを見ていると、
ちょっと違う感覚があります。
「乗り慣れた機体。」
最新鋭機ではない。
少し古い。
傷もある。
性能だって、
新型には負ける。
それでも、
パイロットは言う。
「こいつの方がいい。」
これ。
単なる愛着なのでしょうか。
今回は、
新品のモビルスーツと、
使い込まれたモビルスーツ。
実際に戦ったら、
どちらが強いのか。
考えてみたいと思います。
■まず、普通に考えれば新品が強い
これは、
間違いないでしょう。
新品。
関節。
摩耗していない。
ジェネレーター。
正常。
スラスター。
規定出力。
センサー。
調整済み。
配線。
劣化なし。
機体性能を、
ほぼ設計値通りに発揮できる。
一方。
10年間使われた機体。
関節。
摩耗。
フレーム。
疲労。
センサー。
劣化。
ジェネレーター。
出力低下。
普通に考えれば、
新品の勝ちです。
■でも「機体性能=戦闘力」ではない
ここから、
話が変わります。
モビルスーツは、
無人兵器ではありません。
中に、
人間が乗っています。
つまり、
実際の戦闘力は、
機体性能だけでは決まらない。
機体+パイロット。
この組み合わせで決まる。
だったら、
新品の高性能機へ、
初めて乗るパイロット。
古い機体へ、
何百時間も乗っているパイロット。
どちらが、
本当に速く動けるのでしょう。
■「慣れ」は確実に存在する
車を運転している人なら、
少し分かると思います。
自分の車。
アクセル。
これくらい踏めば、
これくらい加速する。
ブレーキ。
これくらい。
車幅。
ここまで。
ほとんど、
考えていません。
身体が、
覚えている。
でも、
違う車へ乗る。
アクセル。
「お、結構出る。」
ブレーキ。
「思ったより効く。」
最初は、
少し違和感があります。
モビルスーツでも、
同じではないでしょうか。
■ザクからゲルググへ乗ったら本当に強くなる?
例えば。
ずっと、
ザクに乗ってきたパイロット。
そこへ、
最新鋭のゲルググ。
出力。
推力。
武器。
全部、
上。
「今日からこれに乗れ。」
確かに、
機体性能は上がります。
でも、
スラスターを吹かす。
速い。
止める。
思ったより、
進む。
旋回する。
反応が、
ザクと違う。
つまり、
性能が上がったことで、
むしろ最初は、
扱いにくくなる可能性があります。
■速い機体ほど難しい
これは、
かなり重要です。
最高速度。
高い。
加速。
速い。
反応。
鋭い。
スペック表では、
全部、
長所です。
でも、
人間が扱うなら、
話は別。
少し入力しただけで、
大きく動く。
判断が、
少し遅れる。
それだけで、
機体が、
想定以上に移動する。
つまり、
高性能=扱いやすい、ではない。
■使い込んだ機体なら「考える前に動ける」
いつものザク。
スラスター。
これくらい。
ブレーキ。
このタイミング。
左へ旋回。
この角度。
パイロットは、
いちいち考えない。
身体が、
覚えている。
敵を見る。
避ける。
撃つ。
その間に、
「スラスターを出力37%。」
なんて、
考えている暇はありません。
だから、
慣れた機体では、
操作が身体の延長になる。
■モビルスーツが「身体」になる
ここ、
人型兵器という設定とも、
妙につながります。
右へ行きたい。
機体が、
右へ動く。
腕を上げたい。
上がる。
振り返りたい。
振り返る。
パイロットが、
操作している感覚から、
少しずつ、
自分が動いている感覚
へ変わっていく。
もし、
そこまで馴染めるなら、
旧式機でも、
かなり怖い存在です。
■でも古い機体には「癖」がある
前回まで書いてきました。
長く使えば、
機体には、
個体差が生まれる。
右スラスター。
少し弱い。
左膝。
反応が遅い。
右腕。
少し遊びがある。
普通なら、
欠点です。
でも、
長年乗っているパイロットは、
知っている。
■「右へ流れるから、少し左を入れる」
毎回。
無意識に。
これ。
パイロットが、
機体の故障を、
自分の操作で補正している状態です。
つまり、
スペック表では、
性能低下。
でも、
そのパイロットにとっては、
すでに、
その状態が正常。
ここが、
面白い。
■別の人が乗ると「なんだ、この機体?」
パイロット交代。
新しい人が、
古いザクへ乗る。
右へ進む。
少し流れる。
「なんだこれ。」
ブレーキ。
反応が遅い。
「整備不良じゃないか。」
でも、
いつものパイロットなら、
普通に動かす。
つまり、
機体そのものが、
パイロット専用に調整されたわけではない。
人間の方が機械へ適応した。
■では「専用機」は何が違う?
ここから、
シャア専用機なども、
少し違って見えます。
色だけではない。
スラスター。
反応。
操作感。
ペダル。
レバー。
モニター。
シート。
各種制御。
パイロットの好みに合わせて、
調整されている可能性があります。
つまり、
専用機とは、
単に性能を上げた機体ではなく、
特定の人間が最も扱いやすいようにした機体
とも考えられる。
■F1マシンに少し似ている?
同じ車でも、
ドライバーによって、
好みがあります。
ブレーキ。
サスペンション。
ステアリング。
シート。
操作系。
モビルスーツも、
同じかもしれません。
エースほど、
細かな違いが、
戦闘へ影響する。
だから、
「俺の機体。」
という感覚が、
強くなる。
■コンピューターもパイロットを学習する?
そして、
未来の兵器。
ここまで来たら、
もう一歩。
モビルスーツ側も、
パイロットの操作を、
学習していた可能性があります。
このパイロットは、
旋回前に、
少し左脚を使う。
着地では、
こう操作する。
射撃時は、
こう姿勢を取る。
それを、
コンピューターが覚える。
そして、
補助制御を、
少しずつ最適化する。
■つまり「馴染む」のは人間だけではない?
人間。
機体を覚える。
機体。
人間を覚える。
この両方が起きる。
そうなれば、
長く乗れば乗るほど、
操作が自然になる。
新品の機体へ乗り換えた瞬間。
高性能。
でも、
何か違う。
「こいつ、俺の動きを分かってない。」
そんな感覚すら、
あったかもしれません。
■整備兵も「その人の機体」を知っている
さらに、
第三の存在。
整備兵。
パイロット。
「左腕、
ちょっと遅くない?」
整備兵。
データを見る。
正常。
でも、
そのパイロットが、
そう言う。
なら、
調整する。
つまり、
長く使われた機体は、
パイロットだけではなく、
整備兵まで含めて完成していく。
■機体+パイロット+整備兵
これ。
かなり重要だと思います。
モビルスーツ単体。
強い。
ではない。
パイロットが、
機体を知る。
整備兵が、
パイロットを知る。
整備兵が、
機体を知る。
この三つが、
つながる。
すると、
カタログには出ない、
戦闘力が生まれる。
■新品の高性能機へ乗り換えるデメリット
だから、
新型機への機種転換。
簡単ではありません。
操作系。
反応。
視界。
武器。
加速。
全部、
変わる。
さらに、
整備兵も、
新型を覚えなければならない。
部品も、
新しくなる。
つまり、
軍隊全体で見れば、
新型機を配れば、
翌日から戦力アップ。
ではない。
■「慣熟」という時間が必要
新型機。
届く。
パイロット。
訓練。
整備兵。
勉強。
部品。
補給。
故障データ。
蓄積。
少しずつ、
部隊が、
新型機を理解する。
この時間が、
必要です。
だから、
旧式機を、
すぐ捨てられない。
前回の話とも、
ここでつながります。
■でも、いつか性能差は埋められなくなる
もちろん、
慣れたザクなら、
何でも倒せる。
そんな話ではありません。
相手が、
圧倒的に速い。
装甲が、
強い。
センサーが、
優秀。
武器の射程が、
長い。
技術差が、
一定以上開けば、
経験だけでは、
どうにもならない。
つまり、
旧式機には、
明確な限界があります。
■「性能差」と「経験差」の綱引き
新品の最新鋭機。
性能、
100。
パイロット習熟度、
50。
使い込んだ旧式機。
性能、
70。
パイロット習熟度、
100。
どちらが強い?
これ。
単純な数字では、
決められません。
戦場。
地形。
距離。
任務。
全部で変わる。
だから、
面白い。
■ベテランが旧式機に乗る怖さ
古いザク。
傷だらけ。
最新鋭機より、
遅い。
でも、
乗っている人間が、
10年間、
その機体を使っている。
右脚の癖。
スラスターの遅れ。
射撃時の振動。
全部、
知っている。
こちらの方が、
新品の新型機に乗った新人より、
よほど怖い。
そんな状況は、
十分あり得ると思います。
■でも、本当に怖いのは……
ここで、
さらに一つ。
最新鋭機。
しかも、
乗っているパイロットが、
その機体に、
完全に慣れている。
これ。
当然、
一番怖い。
だから、
エースに新型機を与える。
そして、
十分な慣熟期間を与える。
これができる軍隊は、
強い。
■「機体を乗り換える」ということ
ガンダムでは、
主人公が、
新型機へ乗り換える。
盛り上がります。
新しいガンダム。
新しい武器。
新しい能力。
でも、
パイロット側からすれば、
結構怖いはずです。
昨日まで、
自分の身体のように動いた機体。
今日から、
別の機体。
速い。
強い。
でも、
知らない。
■最初の一歩は、少し怖かったかもしれない
コックピットへ座る。
起動。
モニター。
いつもと違う。
レバーを握る。
少し違う。
スラスター。
踏む。
想像以上に、
機体が前へ出る。
その瞬間。
エースでも、
少し思ったかもしれません。
「速いな、こいつ。」
そこから、
新しい機体との関係が始まる。
■機械に「愛着」が生まれる理由
そして、
ここまで来ると、
愛着という言葉も、
単なる感情ではない気がします。
何百時間も、
一緒にいる。
命を預ける。
癖を覚える。
故障する。
直す。
また乗る。
その積み重ね。
だから、
古い機体を、
「こいつ。」
と呼ぶ。
機械なのに、
少しだけ、
人のように扱う。
■ガンプラでも少し似ている
新品のガンプラ。
綺麗。
完成。
格好いい。
でも、
自分で塗装した。
失敗した。
削った。
直した。
デカールを貼った。
ウェザリングした。
少し傷がある。
そういう一体の方が、
妙に、
愛着があったりします。
完璧だから、
好きなのではない。
自分が触った時間が残っているから。
これ。
実際の機械でも、
似ているのかもしれません。
■しめ
新品のモビルスーツと、
使い込んだモビルスーツ。
どちらが強い?
機械だけを見れば、
新品。
これは、
間違いないでしょう。
でも、
戦場で戦うのは、
機械だけではありません。
パイロットがいる。
整備兵がいる。
そして、
その機体と過ごした、
時間がある。
アクセルのような、
スラスターの感覚。
関節の反応。
射撃時の振動。
少し遅れる左脚。
微妙に流れる右スラスター。
全部、
知っている。
だから、
古い機体でも、
迷わず動かせる。
つまり、
「馴染んだ機体」とは、
性能が上がった機体ではなく、
人間と機械の間にある誤差が、限りなく小さくなった状態
なのかもしれません。
そして、
いつか。
その機体にも、
寿命が来る。
パイロットが、
最後にコックピットを降りる。
次の日。
新しいモビルスーツが、
格納庫にいる。
性能は、
上。
速い。
強い。
新品。
でも、
シートへ座った瞬間。
たぶん、
思う。
「違うな。」
機械に心があるとは、
思いません。
でも、
人間は、
機械との間に、
何かを作ることができる。
それを、
僕らは、
「相棒」
と呼ぶのかもしれません。
今日はここまで。
それでは、また別のお話で。