おはこんにちは。
どうも僕です。
宇宙を飛ぶガンダム。
背中のスラスターが光り、
一気に加速する。
敵のビームをかわす。
急旋回。
反転。
そして、
また加速。
これ。
格好いい。
でも最近、
宇宙戦を見るたびに、
妙に気になることがあります。
そのスラスター、いつまで吹かせるの?
ということ。
モビルスーツには、
ジェネレーターがあります。
だから、
エネルギーさえあれば、
ずっと動けそうな気がする。
でも、
実際はそう単純ではありません。
宇宙でモビルスーツを動かすためには、
もう一つ、
非常に重要なものがあります。
推進剤。
今回は、
カタログスペックにはなかなか見えてこない、
モビルスーツの「活動時間」について、
少し考えてみたいと思います。
■そもそも宇宙では、どうやって動く?
まず、
ここからです。
地上なら、
歩く。
走る。
地面を蹴る。
でも、
宇宙には地面がありません。
そこで使うのが、
スラスター。
推進剤を噴射し、
その反作用によって、
機体を動かします。
前へ進む。
上へ動く。
横へかわす。
姿勢を変える。
モビルスーツが宇宙で自由自在に飛び回るためには、
そのたびに、
何らかの推進力が必要になります。
■宇宙では一度加速すれば、進み続ける
ただ、
ここが地上とは違います。
宇宙空間では、
空気抵抗がほとんどありません。
だから、
一度加速すると、
基本的にはその速度で進み続けます。
だったら、
最初だけスラスターを吹かせればいい。
……と思いますよね。
確かに、
ただ真っ直ぐ進むだけなら、
それでいい。
でも、
戦闘ではそうはいきません。
■敵は真っ直ぐ飛んでくれない
敵が右へ動く。
追う。
ビームが来る。
かわす。
後ろを取られる。
反転する。
味方から離れた。
戻る。
また敵が来る。
急加速。
これを、
何度も繰り返します。
つまり、
宇宙戦で大量の推進剤を使うのは、
「前へ進む」ためだけではありません。
速度と方向を変えるため。
ここが重要です。
■止まるためにも推進剤がいる
そして、
地上の感覚だと忘れやすいのが、
これ。
止まるのにも推進剤が必要。
宇宙では、
アクセルを離しても止まりません。
時速100kmで進んでいたら、
そのまま進み続けます。
止まりたいなら、
反対方向へ推力を出して、
速度を打ち消さなければならない。
つまり、
加速する。
推進剤を使う。
止まる。
また推進剤を使う。
方向転換する。
さらに使う。
■ジェネレーター出力と推進剤は別物
ここで、
ガンダムを見るうえで結構重要なポイントがあります。
エネルギーと推進剤は別物。
モビルスーツには、
ジェネレーターがあります。
これによって、
電子機器。
モーター。
センサー。
場合によってはビーム兵器などへ、
必要なエネルギーを供給する。
でも、
ジェネレーターが動いているからといって、
推進剤が無限に湧いてくるわけではありません。
推進剤を使い切れば、
スラスターを十分に使えなくなる。
つまり、
機体にはまだ電力がある。
コックピットも動く。
センサーも生きている。
武器だって使えるかもしれない。
それでも、
自由に動けない。
これ。
宇宙では相当怖い。
■「弾切れ」より怖いかもしれない
ビームライフルが撃てなくなった。
まだ、
ビームサーベルがあります。
武器を失った。
最悪、
撤退すればいい。
でも、
推進剤を失ったら。
その、
撤退そのものができません。
敵が来ても、
かわしにくい。
母艦へ戻りたくても、
軌道を変えられない。
目の前に母艦が見えていても、
自分の進行方向が違えば、
近づくことすらできない可能性があります。
つまり、
宇宙戦では、
「帰れるだけの推進剤を残す」
ことが、
とんでもなく重要だったはずです。
■全力を出せる時間=戦える時間ではない
ここでタイトルに戻ります。
モビルスーツは、
何分間、
全力で戦えるのでしょうか。
これは、
単純に「推進剤がなくなるまで」ではありません。
なぜなら、
全部使ったら、
帰れないから。
たとえば、
100の推進剤を持って出撃したとします。
100全部、
戦闘には使えません。
戦場へ行く。
戦う。
母艦へ戻る。
さらに、
緊急時の予備。
これらを考える必要があります。
つまり、
実際に戦闘で自由に使える量は、
搭載量の一部。
活動限界と戦闘限界は違う。
ここ、
かなり面白いところです。
■エースほど推進剤を使う?
そして、
ちょっと考えてみます。
エースパイロット。
速い。
避ける。
急旋回する。
敵の死角へ回る。
機体性能を限界まで使う。
格好いい。
でも、
それだけ激しく動けば、
当然、
推進剤の消費も増えるはずです。
つまり、
エースの操縦とは、
単純にスラスターを全開にすることではないのかもしれません。
必要な時だけ吹かす。
慣性を利用する。
無駄な加速をしない。
最小限の噴射で、
姿勢を変える。
そう考えると、
本当に上手いパイロットとは、
速い人ではなく、推進剤を無駄にしない人
だった可能性もあります。
■アムロの「避ける」は何が凄いのか
これを考えると、
アムロの凄さも、
少し違って見えてきます。
敵の攻撃を予測する。
撃たれてから避けるのではなく、
撃たれる前に動く。
もしこれができるなら、
急激な回避運動を減らせます。
つまり、
被弾を避けるだけでなく、
推進剤の節約にもなる。
ニュータイプ能力を、
兵器運用という視点で見ると、
戦闘継続時間まで伸ばしていた可能性
がある。
こういう見方も面白い。
■なぜ巨大なプロペラントタンクを背負うのか
そして、
後の時代のモビルスーツを見ると、
妙に目立つものがあります。
巨大なタンク。
たとえば、
サザビー。
シナンジュ。
フルアーマー・ユニコーン。
機体によって用途や構成は異なりますが、
大型のプロペラントタンクを備えたMSが登場します。
子どもの頃は、
単純に、
「でかいタンク、格好いい。」
でした。
でも、
意味を考えると、
もっと面白い。
■タンクを増やせば、行動範囲が広がる
推進剤を多く積めば、
当然、
長くスラスターを使えます。
つまり、
航続距離。
戦闘時間。
高機動戦闘。
これらに余裕が生まれる。
特に、
高推力の機体ほど、
大量の推進剤が必要になる。
高性能スラスターを積んでも、
数分で燃料切れ。
それでは困ります。
だから、
性能を上げるほど、
今度はタンクが必要になる。
■でも、大きなタンクは弱点でもある
ところが、
推進剤を増やせばいい、
というわけでもありません。
タンクが大きくなる。
機体が重くなる。
大型化する。
被弾する面積も増える。
そして、
機動性にも影響する。
つまり、
推進剤を増やすために、
機動性を犠牲にする可能性がある。
ここでも、
兵器設計の難しさが出てきます。
たくさん積めば正解ではない。
必要な量を、
どこへ、
どう積むのか。
これが設計になる。
■増槽なら捨てられる
そこで、
外付けタンクという考え方が出てきます。
長距離移動では、
外部タンクを使う。
戦闘区域へ入ったら、
不要になったタンクを切り離す。
これなら、
移動中は航続距離を伸ばし、
戦闘時には軽くできます。
現実の航空機でも見られる考え方です。
モビルスーツのプロペラントタンクも、
単なる飾りではなく、
作戦半径そのものを変える装備
と考えると、
見え方が変わってきます。
■母艦は「巨大なガソリンスタンド」でもある
そして、
ここで重要になるのが、
母艦です。
ホワイトベース。
アーガマ。
ラー・カイラム。
ネェル・アーガマ。
モビルスーツを運ぶだけではありません。
補給する。
修理する。
弾薬を積む。
そして、
推進剤を補充する。
つまり、
モビルスーツにとって母艦とは、
基地であり、
整備工場であり、
武器庫であり、
巨大な補給ステーションでもある。
だから、
母艦を失うことは、
単に帰る場所を失うだけではありません。
戦い続ける能力そのものを失う。
■母艦から離れるほど怖くなる
これを考えると、
作戦距離も重要です。
母艦から10km。
100km。
1000km。
離れれば離れるほど、
帰還に必要な推進剤が増えます。
つまり、
モビルスーツの行動範囲は、
最高速度だけでは決まりません。
帰ってこられる距離。
これこそ、
実際の作戦半径です。
どれだけ速いモビルスーツでも、
帰れなければ意味がありません。
■推進剤が切れたら、本当に漂流するのか?
では、
完全に推進剤がなくなったら。
すぐ止まるわけではありません。
むしろ逆。
それまでの速度で、
飛び続けます。
しかし、
進行方向を自由に変えられない。
減速できない。
母艦へ近づけない。
つまり、
動いているのに、
自分では行き先を選べない。
これ。
「動けない」より怖いかもしれません。
宇宙空間を、
ただ慣性に任せて進んでいく。
■パイロットにとって本当の恐怖
コックピットは生きている。
酸素も、
まだある。
通信もできる。
遠くに、
母艦も見える。
でも、
帰れない。
ビームライフルに、
弾が残っていても意味がない。
ジェネレーターが、
元気に動いていても意味がない。
機体そのものは、
壊れていない。
なのに、
戦えない。
そして、
帰れない。
宇宙戦における推進剤切れは、
そういう恐怖だったのかもしれません。
■前回の「熱」とつながる
前回、
モビルスーツの熱について考えました。
高性能になれば、
発熱量が増える。
だから、
冷却が必要になる。
そして今回。
高性能になれば、
高推力になる。
すると、
今度は推進剤が必要になる。
つまり、
性能を上げれば上げるほど、
別の制約が増えていく。
高性能とは、自由になることではない。
むしろ、
管理しなければならないものが、
増えていくことなのかもしれません。
■本当に優秀なMSとは?
最高速度。
最大推力。
ジェネレーター出力。
武装。
こうした数字は、
確かに重要です。
でも、
兵器として考えるなら、
もう一つ必要です。
どれだけ長く戦えるのか。
そして、
戦った後、
ちゃんと帰ってこられるのか。
高性能だけど、
すぐ推進剤が切れる機体。
少し遅いけど、
長時間活動できる機体。
軍隊として、
どちらが使いやすいでしょう。
ここでも、
カタログスペックだけでは分からない、
兵器の面白さがあります。
■しめ
ガンダムを見ていると、
つい、
派手なものに目が行きます。
ビーム。
爆発。
高速機動。
巨大なスラスター。
でも、
その青白い噴射のたびに、
機体の中では、
確実に何かが減っている。
そして、
パイロットは、
考えなければならない。
あと何回、
避けられる。
あと何回、
加速できる。
そして、
帰る分は残っているか。
敵を倒した。
武器も残っている。
ジェネレーターも動いている。
機体にも、
致命傷はない。
でも、
帰れない。
宇宙戦で本当に怖いのは、
弾切れではなく、
帰還するための推進剤を使い切ることだったのかもしれません。
そう考えると、
モビルスーツの背中に付いた、
あの巨大なタンク。
妙に格好よく見えてきます。
あれは、
火力を上げる装備ではない。
パイロットを、
生きて帰すための装備でもある。
これ。
そう思って見ると、
ガンダムの宇宙戦が、
また少し違って見えるのである。
今日はここまで。
それでは、また別のお話で。