第四話 放課後の四人

気づけば四人で帰ることが増えていた。

智香が喋り、城が笑い、山本慎二が静かにツッコむ。

柔道部の山本は口数こそ少ないが、驚くほど周囲を見ている。

ある日、重たい資材が倒れそうになった。

三秒。

角度を変える。

誰も気づかない。

——はずだった。

「今の、お前か?」

山本だけが気づいていた。

否定できなかった。

数秒の沈黙のあと、彼は言った。

「いい力じゃないか。」

それだけだった。

追及もしない。

広めもしない。

ただ受け入れた。

潤は初めて思った。

秘密を知る人がいるのも、悪くない。


第五話 三秒より長いもの

文化祭の準備最終日。

脚立が揺れた。

落ちる。

その瞬間、城の腕が潤を支えた。

近い。

心臓がうるさい。

「危なっかしいな」

笑う城。

潤は顔が熱くなるのを感じた。

その夜、教室に四人で残る。

くだらない話で笑う。

時間が過ぎる。

潤は思った。

(三秒じゃ足りない)

この瞬間を、もっと長く味わいたい。

能力じゃなくて。

自分の足でここにいたい。

「潤」

智香が言う。

「前より、よく笑うようになったよね。」

驚いた。

変わっているのは、世界じゃない。

自分かもしれない。

窓の外に夜風が吹く。

潤は小さく決意した。

三秒に頼るだけじゃなく。

自分でも、一歩踏み出してみよう。

青春はきっと——

誰かと並んで歩き始めた瞬間に、動き出す。